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    僕は、小泉純一郎。

    有名な元総理と同姓同名・・・

    でも、全く赤の他人。


    僕のおじいちゃんは、小泉八雲・・本名(旧姓)ラフカディオ・ハーン。


    おじいちゃんは怪談話ばかり書いていた小説家だ。

    でも、でも、おじいちゃんは作り話を書いていたのではない。

    おじいちゃんの実体験を書いていたのだ。

    そう・・・おじいちゃんには全て見えていたのだ。


    僕もその血を受け継いでいて、色んなものが見えちゃうんだよなぁ~・・・

    この血は隔世遺伝らしく、僕の父にはその能力が無い。

    というか、その存在すら知らない・・・らしい。

    おじいちゃんの話によると、能力がある者にだけきちんとした話をするらしい。


    僕の能力をおじいちゃんが見つけたのは、妹の今日子が病気で死にそうになっ

    ていたときに僕がそばにいた死神を追い払おうとした時だ。

    その場にいた父や母は僕が何をしているのか分からず、ただ、妹の死に直面し

    て癇癪を起こしていると思っていたみたい。

    ただ、おじいちゃんにも死神が見えていたので、僕の行動はおじちゃんにはハ

    ッキリと僕の能力を確信させたものになったようだ。

    残念ながら、死神を追い払うことはおじいちゃんにも出来ないらしく妹は死ん

    でしまった。

    ただ、余りにも僕が悲しむのでおじいちゃんはそれを見かねて僕の式神になる

    はずだった妖魔を妹のなかに入らせて妹を・・・妹の体だけだが・・・生き返

    らせた。


    代々、式神とはコノ血を受け継ぐものの伴侶、または執事として生涯仕えるも

    のらしい・・

    だから今、今日子に入っている妖魔は、本当は僕の奥さんになるはずだった・・・

    みたい。

    そのせいか・・・・すっごいヤキモチ焼きだ。

    時々、手に負えない・・・・。


    しかし・・・・まあ・・・こいつのおかげで父や母は妹を失う悲しみを味合わ

    ずに済んだし、僕も姿形だけでも妹と過ごすことが出来ているので文句は言え

    ない。

    その上今日子に入っている式神は朱雀と云って結構有名な守り神らしく、召喚

    したおじいちゃんも羨ましがっていた。


    まあ、そんなこんなで・・・・おじいいちゃんが亡くなった後、色んなものが

    見える能力を引き継いだ僕にはおじいちゃんの知り合いを通して様々な依頼が

    来るようになった。

    迷惑な話だ。

    しかも・・・来た依頼を結構サクサク解決してしまったので、その世界でそこ

    そこ有名になってしまった。

    そうなるともっと依頼が来るようになり・・・・悪循環だ・・・・・

    父や母を心配させないように僕はこの能力を秘密にしているので、色んな出来

    事を隠すのも一苦労なんだ。

    フェラーリ


    ある日、大学から帰ってくると家の前にフェラーリ・ランボルギーニ・ヴェネーノが停まっていた。


    「なんだ??豪勢な客でも来てんのかな?」


    独りごちて玄関を開けた。


    「ただいまー。」


    声を掛けて家に入ると、いつもならダッシュで出迎えるはずの今日子が出てこない。

    まだ帰ってないのかと沓脱をみると靴はある。


    「おーい、今日子?いないのか?」


    奥のリビングに声を掛けてみたが返事がない。

    どうかしたのかとちょっと心配になってリビングから今日子の部屋へと向かった。


    「お~い、今日子、開けるぞ~。」


    今日子の部屋のドアを開ける。


    「キャッ!・・・ちょっと~!レディの部屋のドアをいきなり開けないでよ~!着替えてたりしたらどうすんのよ~!」


    「ふん!知るか、お前の裸なんか見ても何とも思わないさ。」


    「あ~~~~!!!すっごい失礼!!!」


    「うっさい!!!・・・ん?なんかおかしいな?・・・お前、なんか隠し事してないか?」


    「・・・・し、してないわよ・・・・」


    明らかに動揺した今日子を追い詰めるのは簡単だ。


    「こら!!ご主人様に隠し事する式神はタコツボにでも閉じ込めちゃうぞ。」


    「・・・・あ、だめ。そんなことしちゃ嫌だ・・・。だめ・・・。」


    「じゃあ・・・全部話せ。」


    「・・・・はい・・・・あの・・・ちょっとした依頼があって・・・・。」


    「依頼?ふ~ん・・・・。いつ?」


    「あの・・・その・・・1週間くらい前・・・・。」


    「はあ~?なんで1週間も俺に黙ってたんだ?」


    「あの・・・・その・・・・」


    あ!!!!あの車!!!!


    「こら!!!雀!!!!てめ~、また、遣い込みしやがったな~!!!」


    「・・・ごめんなさい。・・・あの・・・丁度免許取ったので・・・つい、車欲しくなちゃって・・・。」


    「このばか!!車欲しくなったからって、ランボルギーニとはどういう了見してやがんだ!」


    「あ、でも・・・カッコよかったんだもん・・・。」


    「カッコよかったって・・・ふざけんな!一体いくらしたんだ!?」


    「・・・・その・・・4・・・ぉくぇん・・くらい・・・」


    「は~~~~~~~~ぁ~~~?4、お、く、えん?」


    「・・・うん。」


    「てめ~!!!殺すぞ!!!一体どこからそんな金出したんだ!!!」


    「あ、その・・・だから・・・1週間前の依頼金・・・・・」


    「はぁ?依頼金?・・・前金4億もか?」


    「あ・・・・その・・・前金じゃなくて・・・・。」


    「・・・・全部で4億か?・・・・それ全部使ったってのか?」


    「・・・・・は・・・・ぃ・・・・。」


    「・・・・死ねよ、バカ雀。・・・ま、お前が遣ったんだ、どんな案件かは知らんけど、お前が勝手に解決するんだな。」


    「そんな~~~~・・・・。おにま~~~~~。」


    「ふん・・・・甘えても知るか!!」


    「・・・・すっごい事件なの。私じゃ無理・・・・おにま・・・。」


    それから30分くらいスズメを虐めて過ごした後、その依頼内容を聞かされたが・・・・。

    冗談じゃない!まだ俺は死にたくない!原因不明の集落全滅事件なんてかかわりたくないって~の。

    しかし・・・4億も遣い果たしやがったスズメのせいで、折角の週末なのに・・・・泣く泣く現場となった埼玉県へ向かう羽目になった。



    閑話休題

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    そもそも4億円もの依頼金が出る案件とはどんな事件なのか?

    雀(今日子)の説明によると、依頼人は埼玉県川口市の助役で、緊急の案件(危険手当込み)である為,解決金では無く前金で全額支払う、それほど切迫した依頼だった。

    にも関わらずバカ雀は自分が車が欲しかったからと1週間もその事を内緒にしやがった。

    切迫した状況がこの1週間でどれくら悪化してるのか想像するのも恐ろしい。



    次の日、買った車で行きたがるバカ雀を叱り飛ばし、ついて来るのを嫌がったカラス(天狗➡見た目は文鳥)を引き連れ、勿論伝家の宝刀「春雨」も携えて現地へ向かった。

    鳩ヶ谷地区の入り口に位置する「S町」へ差し掛かかり今日子と軽口を叩き合っていると中心部方向から来た1台の車が僕らの目の前で停車した。


    「君たち・・・・この先には行ってはいけない。・・・・ゾンビが居るのだ。この車に乗りなさい、送ってあげるから」


    「え~~~!!ゾンビ~~???キャハハ、このおじさんおもしろ~い。おにま!ゾンビだってよ~~~。うっかり車乗ったらこのおじさんから食べられちゃったりして~」


    「あ、いや、そんな事はしない。・・・・確かにそんな話は信じられないとは思うが・・・だが本当なんだ。この道は進んではいけない。」


    彼は他に危機を伝える手段を思いつけず、訴えかける様な目をして声高に訴えた。


    「あら?・・・・おにま!なんか本当みたいだよ?どうする?」


    「ああ・・・・おじさん、ご忠告ありがとうございます。まあでも・・・大丈夫ですから・・・僕らの事はお気になさらずに逃げちゃって下さい。・・・ただ・・・・」


    「えっ?・・・大丈夫とは・・・・ただ、なんだい?」


    「あ、いえ・・・どうぞ、行っちゃって下さい」


    「・・・・・良いのか?乗っていかないのか?」


    「うん、おじさん、大丈夫だから、お気をつけて~。じゃあ~ねぇ~」


    怪訝そうな顔をしながら彼は車を発進させた。

    しかし、その先には政府がつい先程、事象原発地域の隔離を決定したため、その為の検問所が設置されていた。


    「う~ん・・・やっぱり、あのおじさんに検問所の事、教えて上げた方が良かったかなぁ~。」


    「・・・別にいいんじゃない。あのおじさん自身も危ないかもだし・・・おにまには関係ないじゃん。」


    「ま・・・そうだな。」


    おじさんの事は横に置いとくとしても、おじさんが言っていた「ゾンビ」の事はそうはいかない。


    「しかし・・・ゾンビかぁ~・・・・。厄介な事になりそうだな~。」


    それまで黙って肩に乗っていたカラス(天狗➡見た目は文鳥w)が、その一言でさっと飛び立ち・・・逃げた。


    「あっ・・・あいつ、また逃げやがった!!」


    「あ~~~!ずる~い!!・・・良いの?おにま。」


    「・・・ふん、帰ったら折檻してやる!・・・ただし・・・雀、お前も4億円分、折檻だぞ。」


    「え~~~~!!!やだ~。もう許してくれてもいいじゃない~。」


    「バカ言え!!4億だぞ、4億。一生分の金だぞ。・・・車なんぞに勝手に遣いやがって。」


    僕は根に持つタイプなのだ。

    そうこうするうちおじさんが言っていたレストラン(ドライブイン?)の前についた。


    「・・・おにま・・・なんか・・・妖気が・・・・。」


    「ああ・・・いかにもって感じだな。・・・ま、入ってみよう。」


    「・・・・・大丈夫なの?・・・・」


    「なんだ?怖いのか?・・・ハハハ・・・朱雀の癖に・・・最近まともに仕事してないから鈍ったのか?」


    「・・・失礼ね・・・鈍ってなんかないわよ。・・・フンだ。」


    ちょっとプンプンしながらスズメが入り口のドアを開けると早速ゾンビのお迎えだ。


    「い・しゃ・っら・い。・・・あ~ぐ~」(いらっしゃい。)


    死臭を漂わせながら2人を出迎えた。

    取り敢えず案内されたテーブルについてレストラン内を観察していると、先程のゾンビ店員が注文を取りに来た。


    「な・に・ん・ま・し・か・ま・す・・・ぐぶぶぶ」(なんにしますか?)


    テーブルに置かれた泥水入りのコップを手に取り眺めながら・・・


    「ちょっと待って。・・・決めたら呼ぶから。」


    「・・・あ、い・・・」


    ゾンビが背を向け歩き去って行く。


    「・・・おにま・・・妖魔がたくさんいるよ~。」


    「ああ・・・店員から客迄、全部だな。」


    「うん・・・どうするの?」


    「・・・ま・・・お前がなんとかするだろ?」


    「えぇ~っ?なんでぇ~!」


    不服そうに僕を睨む雀だったが、死者に憑りつく妖魔は基本的にレベルが低いので今日子で十分、僕が出るまでもないだろう。

    妖魔にも質の違いやレベルがある。

    朱雀の様に人間に悪さをしない(寧ろ守る)妖魔と(前回のお話しに登場した猫娘の様な悪さをする)妖怪・鬼の類・・・が質の違い。

    レベルで言うと式神の様な霊的に高いものと座敷童の様な低いものがいた。

    死者に憑りつく妖魔は基本的にレベルも質も最低だ。

    レベルが高い式神クラスだと死体を蘇生させて(死んだ妹を蘇生させて憑依した朱雀の様に)平然と人間界に溶け込む。

    レベルが低いとそれが出来ずに死体に憑りついてしまう結果になる。

    語り継がれる「蘇り伝承」の殆どがその例だ。

    あげくは腐って肉体は滅び、それとともに妖魔も滅んでしまう。
    (妖魔は憑依を繰り返すことは出来ないのだ。1回憑いたら他にはいけない。)

    憑りつく標的がいない奴はフラフラそこら辺を漂うはめになる。




    ちょっと観察したところ、このゾンビたちは悪さを仕掛けるつもりは無い様だ。

    しかし・・・まあ・・・人間様の勝手だがここは消えてもらうしか解決策が無さそうだ。


    「雀、喰え。」


    「あ、また雀ってぇ~。もう、私は朱雀!スズメじゃないもん!」


    「・・もう、メンドクサイから・・・早く、喰え。」


    「・・・・わかったわよ~・・・もう・・・ほんと面倒くさがり屋なんだから~」


    キュイ~ン!!!!!ピカッ!!!!


    朱雀が本来の姿を現す。

    一瞬でレストラン内は妖魔達(ゾンビ)の悲鳴で満ちた。


    憑依した妖魔をスズメが喰ったのであたり一面は死体の山になったが、取り敢えずこの場の処置はこれで終わり。

    しかしながら・・・問題はまだまだ山積している。

    なんでこんなに妖魔が蔓延っているんだ?



    レストランを出発して僕らは鳩ヶ谷地区の中心にある珍々堂医科大学に向かった。

    そこに大きな妖気を感じたからだ。



    閑話休題





    地区の中心部である珍々堂医科大学に近づくと、鳩ケ谷全体を覆いつくす妖気の中心部である事がハッキリしてきた。

    大学の正門前で暫し観察する。


    「おにま・・・なんか、怖い。経験した事ないくらい妖気が大きいよ・・・・。」


    不安そうに今日子が呟いた。


    「・・・・う~ん・・・そうだな・・・・」


    確かに、今まで相手にしてきた妖魔たちが出していた妖気と比べると桁違いにその全体像は大きかった。

    しかし・・・僕はある違和感を感じてもいた。

    その違和感の正体は解らずにいたのだが・・・・。


    「ま・・・ここで立ち竦んでいても埒が明かないから、取り敢えず入ってみるか。」


    「う・・・・・ん・・・・」


    恐る恐る2人で学内へ。




    大学中心部にある交流スペースの一角にあるサークル用テラスで超常現象研究会のメンバーが今回の事件について検討会を開いていた。

    その個性的なメンバーは、最上級生の「珍宝 太」3年「保々下 伊代」・「御目溢院 多聞」2年「尾奈兄 舞伴」1年で留学生の「ジョージ・マグワイアー」の5人だ。

    それぞれの見解を述べ合い事態の究明を真剣に議論していた。


    「・・・・ところで、今週のセンテンススプリングに、”安倍御主人の予言の文”ってのが載ってたけど・・・みんなどう思う?」


    議長役の太がみんなの意見を聞いた。


    「あ、あれ・・・結構真実味あるよね~。とにかく全部当ってるし。多聞はどう思った?」


    まとめ役のお姉さんキャラの伊代がいつもの熱い視線を多聞に送る。


    「あ、・・・うん・・・そうだね。」


    「あは・・・多聞さん・・・もう諦めて伊代さんと付き合っちゃいなよ。」


    伊代の多聞へのアタックを実はうらやましく思っている舞伴が茶々を入れる。


    「オー!マイガー!伊代さん、多聞さんの事ラブなのですか~?」


    そこにジョージも加わり話が脱線し始めた。


    そこへカップルらしき2人が声を掛けてきた。


    「すいません・・・ちょっとお話をお聞きしたいんですけど・・・。」


    リーダーの太がそれに対応した。


    「はあ・・・何でしょうか?」


    「あ、はい、実は今回の事件について市役所から調査を依頼された者で、小泉と言います。こっちは妹の今日子です。」


    「あ、・・・探偵さんですか?・・・あ。綺麗な妹さん、どもです。」


    太のお世辞に今日子がはにかんだ。


    「・・・それで、今ちょっと聞こえちゃったんですが・・・安倍御主人の予言の文・・・週刊誌に載ったんですか?」


    「あ、はい。今週号に載ってました。それが何か?」


    「あ、はい・・安倍御主人は・・・まあ・・ご先祖様に当るもので・・・・。」


    「え~!!」


    一同が驚きの声を上げた。

    純一郎はてっきり安倍御主人の子孫だという事に驚いたのだと思ったがそうでは無かった。


    「へ~!じゃあ、安倍美於士(あべ みゅーじ)先輩の親類に当るんですね。」


    今度は純一郎が驚く番だった。


    「えっ?・・・美於士くん、この大学だったんだ!」


    「あ、やっぱり、親類なんですね?」


    「はあ・・・従兄弟です。」


    「へ~・・・世間って狭いですね。」


    美於士がこのサークルの先輩に当りその親戚と言う事で一気に打ち解けた。


    「・・・今美於士はどこにいますか?久々に会って・・・ついでに話も聞きたい。」


    「あ・・・・それが・・・・。」


    一同の顔がいきなり曇った。


    「あれ?どうかしました?」


    「はあ・・・それが・・・・。」


    顔を見合わせたメンバーたちが、話し難い事をそれぞれが分担してという感じで皆でちょっとづつ重い口を開いて事情を説明した。

    昨年夏前、美於士の恋人が従姉妹の婚約者とW二股関係になり、しかもそこにお金が絡んでグチャグチャな4角関係に陥った末・・・なんとその2人が揃って腹情死するという結末を迎えた。

    その後美於士は休職して行方が分からなくなった・・・・と。


    「う~ん・・・・全然知らなかったなぁ~。そんなことがあったなんて・・・。」


    「・・・僕らサークルの皆も結構心配してるんです。凄く優しい良い先輩だったんで。」


    「そうなんだ・・・・。あ、ところで、その従姉妹は今どうしてます?」


    「あ、田宮先生なら大学病院にお勤めされてますよ。」


    「田宮先生って言うんですね。・・・分かりました。色々どうもありがとうございました。」


    2人とも軽く会釈して・・・・大学病院へと向かう様だ。


    「・・・市役所が探偵使って何調べているんだろうね?」


    伊代の言葉に皆顔を見合わせ考え込んだ。





    「おにま・・・ここ、かなりヤバくない?」


    今日子が心持ち緊張の度合いを高めながら僕の顔を見る。


    「そうだな・・・・まあ・・・今回は早くもボスキャラ登場って感じだな・・・。」


    覚悟を決めて僕らは病院の中に入った。



    閑話休題





    病院の玄関を入り受付へと歩みを進める。

    今日子はかなりビビっているようで僕の後ろに隠れてくっ付いてくる。


    「・・・すいません、田宮先生にお会いしたいんですが。」


    ちょっと見、かなり美人の受付嬢に100%の笑顔で尋ねた。

    後ろで今日子が睨んでいたのはいつもの事だ。


    「田宮先生ですか?お約束でしょうか?」


    「あ、いえ。従兄弟の事でちょっとお伺いしたい事がありまして。」


    「失礼ですが、どういったご関係でしょうか?」


    「・・・う~ん・・・従兄弟とはこちらに在籍している安倍美於士で・・・現在は休職中という事ですが・・・田宮先生とも”また従姉弟”の関係にあたります。」


    「あ、安倍先生の・・・少々お待ち下さい。」


    受付嬢が好奇の光で溢れた目でこちらを見ながら田宮先生への取次ぎを行う。


    「お待たせしました。こちらを真っ直ぐ行った研究棟の5Fにある乳酸菌研究室にお越しくださいとの事です。」


    受付嬢の好奇心を満たしてあげたいところだが、今日子が背中を抓るので仕方なく早々と目的地へ向かう事にした。




    目的の研究室の前に来ると、そこはまるで地獄への入り口と云った感じの究極の妖気で包まれていた。


    「おにま・・・マジ怖い。」


    さすがの朱雀も足が竦んでいるようだ。


    「ああ・・・こりゃ~大変そうだ。・・・春雨すぐ出せるように用意しておいてくれ。」


    「あ、うん。」


    後ろに抱えた釣り竿ケースを開けて胸に抱えながら僕の後ろへピッタリくっ付く。

    コンコンコン。


    「はい、どうぞ。」


    妖気とは裏腹な明るい声が返ってきた。

    ちょっとだけ深呼吸しながらドアを開ける。


    「こんにちは。初めまして、田宮です。こちらへどうぞ。」


    おや?可愛いぞ。

    つい、にやけてしまうと後ろから今日子の背中抓り攻撃が来た。


    「痛っ・・・こら、雀!・・・あ、すいません、こちらの事です。失礼します。」


    田宮先生から示された応接ソファーへと腰を下した。


    「・・・コーヒーで良いですか?」


    「あ・・・おかまいなく・・・。」


    「いえいえ・・・美於士の従兄弟って事は私の”はとこ”になるんですよね?・・おもてなしはしないと、フフフ・・・。」


    「そうですね・・・こんな美しいはとこが居たなんて・・・初めて知りました。」


    「アハハ・・・お口が上手いのね。」


    そのやり取りの間中今日子の抓り攻撃は続いていた。

    コーヒーが入ったカップをテーブルに置きながら田宮先生は正面に座った。

    「あ、ありがとうございます。頂きます・・・・。」


    コーヒーを飲みながら室内をそっと観察する。

    相変わらず究極の妖気に包まれている事には変わりは無かったが、大学に入った時に感じた違和感をそのときもまた感じた。

    何だろう、この違和感は・・・・・。



    「それで・・・今日は美於士の事だと伺いましたが・・・美於士の何を知りたいのですか?」


    「はあ・・・いや・・・実は、美於士君の事は、この大学に来て知ったんです。本当は・・・今回の事件について川口市から調査を依頼されていまして・・・。」


    「・・・・どういう事ですか?」


    「・・・う~ん。え~っと、実は僕はその・・・陰陽道にかかわりのある者で・・・。」


    「陰陽道?はあ・・・」


    ちょっと怪訝な表情が浮かんだ。


    「あ、・・・まあ、胡散臭いですよね、ハハハ・・・。」


    「あ、いえいえ・・・。美於士の本家がそう云った関係だとは聞いていましたから。」


    「そうですか。実は、まあ、その関係で色々やってまして・・・。」


    「はあ・・・で、それと何か関係が?」


    「ええ・・・多分・・・・。」


    その時、恐怖をそれまで必死に堪えてきた今日子がブチ切れた。


    「おにま・・・もういいじゃない。・・・コイツ、魔物よ~!!!」


    「・・・なに?急にどうしたの?・・・魔物って?」


    田宮先生は明らかに戸惑った表情で、しかし、取り乱す事もなく、逆にこちらを問いただす。

    ヒソヒソヒソ・・・・
    (シッ!黙ってろ雀!)(あ、また雀って。)(いいからお前は黙ってろ、話がややこしくなるだろ。)(だって・・・)(いいから、俺に任せとけってば!)(・・・わかった・・・)


    「あ、失礼しました。魔物はちょっと言い過ぎですよね。」


    「・・・はとこだからって・・・さすがにちょっと失礼じゃありませんか?初めて会ったのにそんな言い方。私が何をしたと仰るんですか?」


    「う~ん・・・いや、実はまだ良く解らないんです。ただ・・・田宮先生が今回の事件について何か知っていらっしゃる事だけは・・・確かですよね?」


    「知りません。・・・私は関係ありません。」


    きっぱりとした避妊、あ、いや、否認の言葉と裏腹にその目に動揺が走ったのを僕は見逃さない。

    こう見えても僕はその世界では結構有名なのだよ、明智君。


    閑話休題




    「いや・・・先生、貴方はご存じの筈だ。隠さず全て話して下さい。」


    「・・・お話しすることは何もありません。もう、帰ってください。」


    「・・・残念ながらそうはいきません。なんせ今回は人類絶滅の危機ですから。市役所の依頼と言いましたが、勿論政府も関係しています。」


    「そ、そんな事、私には関係ありません。」


    「いや、そうはいきません。僕の電話1本で政府は多分貴方に拷問でもなんでもするでしょう。だって人類絶滅したら世論だの何だの関係なくなりますからね。」


    「そ、そんな・・・・」


    「まあ・・・落ち着いて。座って下さい。別に僕は貴方が何をしていようがそれを咎め立てたりするつもりは無いんです。」


    少々興奮気味だった田宮先生が僕の言葉の意味をどう取ればいいのか訝し気にしながらも腰を下した。


    「それで・・・今回の事件の発端を教えて頂けますか?」


    「そ、それは・・・」

    まあ、そう簡単には決心は着かないだろうな。

    ではもうひと押し。


    「先生・・・あなたの誕生日は6月6日午後6時ですよね?」


    「えっ?・・・何故時間まで?」


    おや?田宮 杏 ➡ ダミアン ➡ 映画「オーメン」 ➡ 666 から適当に言ってみたら当たったらしいぞ。


    「まあ・・・陰陽師なので、それくらいは。」


    「はあ・・・・。」


    よし、一気に攻めちゃおう。


    「多分、どなたかを殺しましたね。それが関係してるんだと思いますが、どうですか?」


    「そ、それは・・・あの・・・でも・・・・。」


    また、当たり。


    「さっきも言った様に僕は貴方の個人的な犯罪には全く興味はありません。なので、それで警察沙汰になるとかは全く無いので、真実を話して下さい。先生だって人類が滅亡して欲しいわけじゃないでしょう?」


    「そ、それは、そうです。そんな、大変なことしたい訳では・・・。」


    「では・・・話して下さい。多分僕なら善処できますよ。」


    「・・・・・はい。・・・・・・・」


    さすがに田宮先生も観念したようで、それからは素直に質問に全て答えてくれた。



    今日子が言った様に普通の人から見るとこの人は魔物だった。

    都合8人を(自分で、あるいはそう仕向けて)殺害していた。

    ただし、今回の事件については不可抗力といったところか。

    話を聞くうち「禰 莉愛」教授の話になったくだりで、学内に入った時・この研究室に入った時に感じた違和感の正体が解った。

    学内、この研究室に漂っている妖気は「禰 莉愛」の怨念だったのだ。

    なので、実害は無いのに強すぎる妖気・・・これが違和感の正体だった。


    「分かりました。先生、その禰教授の研究内容の資料とかありますか?」


    「あ、はい・・・」


    机の引き出しから1つのUSBを取り出し、僕に差し出した。


    「じゃあ・・・後は・・・ここの妖気を取り払います。それで田宮先生も少しは心安らかになられると思いますよ。・・・・・今日子、春雨を。」


    「あ、はい。」


    春雨を今日子に持たせておいて、印を結ぶ。


    「臨・兵・闘・者・皆・陣・裂・在・前!!!」


    すぐさま「春雨」を抜き、空を斬る。


    ピカッ!!!

    室内に強い光が充満してさっきまで溢れかえっていた妖気が消失した。



    「・・・・これで、終わりです。じゃ、田宮先生、美於士君が戻ったらよろしく言っておいて下さい。」


    「はい・・・・あの・・・ホントに・・・私は・・・」


    「・・・さっきも言った様に人間界での出来事には僕らは干渉しません。・・・だけど・・これからは違う生き方をしていかれた方がよろしいかと・・・。それと・・・ヒソヒソ・・・」


    「あ、はい・・・。」



    研究室を出るとすぐ今日子が否やを唱えた。


    「おにま・・・ホントに黙ってるの?あのままで良いの?・・・あの人、人殺しよ。魔物なのよ。」


    「・・・まあ・・・いいさ。ホントの魔物(禰 莉愛)を彼女が殺してくれたから人類は絶滅を逃れた様なもんだから。」


    「それはそうだけど。でも・・・」


    「良いんだ・・・。毒気は抜けてるし・・・自分で自分の1番愛した人を殺したんだ。もう何をする気力も残ってないさ。僕らは警察や裁判所じゃ無いから・・・一々犯罪まで取り締まっていたらたまったもんじゃない。」


    「うん・・・まあ・・・・。」


    今日子は何となく納得出来ない様な顔をしていたが・・・。

    実は帰り際、杏ちゃん♪とこっそりデートの約束をした事を今日子は気付いていない。




    帰りがけに近くの神社で、陰陽の秘術である妖魔吸集の術を使い、近隣に蔓延るヨワヨワ妖魔どもを集めて、まとめて朱雀のエサにして今回の依頼は無事解決。

    強敵と戦わずして終わったのは(杏ちゃん♪と➡)愛でたし、愛でたし、あ、めでたし、めでたし。

    道すがら、検問所に立ち寄り市の助役さんと政府の危機管理対策室長に「禰教授の細菌」の資料を渡して、その細菌感染者には杏ちゃん♪が言っていた「○○型」の抗生物質が特効薬になるからすぐさま国民全員に渡すように助言しておいた。


    「いや~!!今回は本当に小泉先生にお助けいただいて・・・。大袈裟ではなく、人類を代表してお礼申し上げます。」


    「いや、過分な依頼金を4億も頂いてしまったもので、その分だけは働きませんと・・・」


    「あ、その後の3億はまだ入金されてませんでしたか?もしそうなら、直ちに。」


    キッ!!!っと今日子を睨んで・・・


    「あ、いえ・・・こちらの確認が未確認なだけだと。帰ったら見てみます。今回はご依頼ありがとうございました。」


    「とんでもありません。こちらこそありがとうございました。」


    深々と頭を下げる2人の依頼者に見送られながら帰路へとついた。




    「・・・・スズメ・・・てめ~、ホントに殺すぞ!・・・あと3億・・・どうした。」


    「・・・ご、ごめんなさい・・・あの・・・埼玉って事(浦和レッズ=レッドダイアモンズ)で・・・宝石屋さんに飾ってあった3億円のレッドダイアモンドが欲しくなって・・・ごめんなさ~い!!!」




    家に帰り着いたらすぐに朱雀(今日子)をタコツボに閉じ込めたのは言うまでもない。





    おしまい。

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