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週末は終末の予定~百鬼夜行抄 外伝 4(4)

2016.04.08.07:00





病院の玄関を入り受付へと歩みを進める。

今日子はかなりビビっているようで僕の後ろに隠れてくっ付いてくる。


「・・・すいません、田宮先生にお会いしたいんですが。」


ちょっと見、かなり美人の受付嬢に100%の笑顔で尋ねた。

後ろで今日子が睨んでいたのはいつもの事だ。


「田宮先生ですか?お約束でしょうか?」


「あ、いえ。従兄弟の事でちょっとお伺いしたい事がありまして。」


「失礼ですが、どういったご関係でしょうか?」


「・・・う~ん・・・従兄弟とはこちらに在籍している安倍美於士で・・・現在は休職中という事ですが・・・田宮先生とも”また従姉弟”の関係にあたります。」


「あ、安倍先生の・・・少々お待ち下さい。」


受付嬢が好奇の光で溢れた目でこちらを見ながら田宮先生への取次ぎを行う。


「お待たせしました。こちらを真っ直ぐ行った研究棟の5Fにある乳酸菌研究室にお越しくださいとの事です。」


受付嬢の好奇心を満たしてあげたいところだが、今日子が背中を抓るので仕方なく早々と目的地へ向かう事にした。




目的の研究室の前に来ると、そこはまるで地獄への入り口と云った感じの究極の妖気で包まれていた。


「おにま・・・マジ怖い。」


さすがの朱雀も足が竦んでいるようだ。


「ああ・・・こりゃ~大変そうだ。・・・春雨すぐ出せるように用意しておいてくれ。」


「あ、うん。」


後ろに抱えた釣り竿ケースを開けて胸に抱えながら僕の後ろへピッタリくっ付く。

コンコンコン。


「はい、どうぞ。」


妖気とは裏腹な明るい声が返ってきた。

ちょっとだけ深呼吸しながらドアを開ける。


「こんにちは。初めまして、田宮です。こちらへどうぞ。」


おや?可愛いぞ。

つい、にやけてしまうと後ろから今日子の背中抓り攻撃が来た。


「痛っ・・・こら、雀!・・・あ、すいません、こちらの事です。失礼します。」


田宮先生から示された応接ソファーへと腰を下した。


「・・・コーヒーで良いですか?」


「あ・・・おかまいなく・・・。」


「いえいえ・・・美於士の従兄弟って事は私の”はとこ”になるんですよね?・・おもてなしはしないと、フフフ・・・。」


「そうですね・・・こんな美しいはとこが居たなんて・・・初めて知りました。」


「アハハ・・・お口が上手いのね。」


そのやり取りの間中今日子の抓り攻撃は続いていた。

コーヒーが入ったカップをテーブルに置きながら田宮先生は正面に座った。

「あ、ありがとうございます。頂きます・・・・。」


コーヒーを飲みながら室内をそっと観察する。

相変わらず究極の妖気に包まれている事には変わりは無かったが、大学に入った時に感じた違和感をそのときもまた感じた。

何だろう、この違和感は・・・・・。



「それで・・・今日は美於士の事だと伺いましたが・・・美於士の何を知りたいのですか?」


「はあ・・・いや・・・実は、美於士君の事は、この大学に来て知ったんです。本当は・・・今回の事件について川口市から調査を依頼されていまして・・・。」


「・・・・どういう事ですか?」


「・・・う~ん。え~っと、実は僕はその・・・陰陽道にかかわりのある者で・・・。」


「陰陽道?はあ・・・」


ちょっと怪訝な表情が浮かんだ。


「あ、・・・まあ、胡散臭いですよね、ハハハ・・・。」


「あ、いえいえ・・・。美於士の本家がそう云った関係だとは聞いていましたから。」


「そうですか。実は、まあ、その関係で色々やってまして・・・。」


「はあ・・・で、それと何か関係が?」


「ええ・・・多分・・・・。」


その時、恐怖をそれまで必死に堪えてきた今日子がブチ切れた。


「おにま・・・もういいじゃない。・・・コイツ、魔物よ~!!!」


「・・・なに?急にどうしたの?・・・魔物って?」


田宮先生は明らかに戸惑った表情で、しかし、取り乱す事もなく、逆にこちらを問いただす。

ヒソヒソヒソ・・・・
(シッ!黙ってろ雀!)(あ、また雀って。)(いいからお前は黙ってろ、話がややこしくなるだろ。)(だって・・・)(いいから、俺に任せとけってば!)(・・・わかった・・・)


「あ、失礼しました。魔物はちょっと言い過ぎですよね。」


「・・・はとこだからって・・・さすがにちょっと失礼じゃありませんか?初めて会ったのにそんな言い方。私が何をしたと仰るんですか?」


「う~ん・・・いや、実はまだ良く解らないんです。ただ・・・田宮先生が今回の事件について何か知っていらっしゃる事だけは・・・確かですよね?」


「知りません。・・・私は関係ありません。」


きっぱりとした避妊、あ、いや、否認の言葉と裏腹にその目に動揺が走ったのを僕は見逃さない。

こう見えても僕はその世界では結構有名なのだよ、明智君。


閑話休題

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