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    時の片~かけら  18

     31, 2012 07:00
    「教授~・・・・」


    拍子抜けした幸治が諸熊にそりゃないでしょ・・・って感じの視線を向ける。


    「あ、イヤ・・・まあ、解らないのだけど・・・これは個人的な意見として言うと・・」


    「あ、ハイ・・・」


    「このナイトヘッドの活動がタイムスリップと密接な関係を持っているのは想像に難くない、と云う事だね。」


    「じゃあ早苗さんのタイムスリップは外的要素では無くて自身の内的要素で起こっていると云う事ですか?」


    「うん・・・そう云う事になるかな。ただ、そのナイトヘッドの活動が活発になった理由は最初の眼鏡橋の崩落時に、多分・・・頭を強打したのが原因と考えられるけれどね。」


    「そうですか・・・じゃあ先生、私の記憶の一部が無い事もその事と関係しているんでしょうか?」


    「そうですね、頭部の強打はしばしば記憶喪失の原因になりますね。」


    「ヘー(´ν_.` )ソウナンダ・・・僕の記憶障害とは原因が違うんですね・・・」


    「そうだね。幸治君の記憶障害は主に心理的要素が関係していると思われるからね。」


    「ε=(・д・`*)ハァ…・・・教授、それで・・・治るんですか?」


    「う~ん・・・・それは何とも言えないな~・・・申し訳ないけど・・・すまないね早苗さん。」


    「いえ、そんな・・・」


    「教授、じゃあ、どうすればいいんですか?」


    「う~ん・・・取り敢えず、なるべく脳の活動を活発化させないように安静にしておくことと、・・・あまり深く考えすぎてストレスを貯めない様にする事が今最善の策かなぁ・・・」


    「はあ・・・・教授、市内観光とかもマズイですかね?」


    「いや・・・それは構わないんじゃないかな。リラックスすることはストレスの発散に繋がるしね。あと、安定剤を出しておくから服用して下さい。」


    「はい、分かりました。本当にありがとうございます。見ず知らずの私の為に・・・」


    「イヤイヤ・・・女将さんの頼みがキチンと効けて私も胸のつかえが降りましたよ。」



    取り敢えず毎週検査をしてみて様子を見てみよう、と言う事でその日の診察は終わった。

    しかし、早苗にとって来週とは・・・・



    その日は既に日暮れに差し掛かったので市内観光は翌日からと云う事にして帰りに幸治の親戚がやっている割烹で夕食を取り帰宅した。


    そうして2日目は終わった。



    3日目、4日目と幸治は早苗を市内観光に連れ出した。

    ややもすれば沈みがちな気分を幸治が明るくしてくれる。

    ただ一つ気になっている事が早苗にはあった。

    自分の家族がどうしているか?と云う事だ。

    住所だけがどうしても思い出せなくて捜す術が無かった。

    だが、どうしても気になり幸治に相談してみたところ、じゃあ警察に行ってみようと当事者の早苗より張り切りだして5日目は朝一番に出かける事になった。


    警察に着くなり幸治の熱心なお願いが始まり、あやふやな情報しかなく見つかりそうもない事案に乗り気が全く無かった担当の警察官さえその心持ちに気持ちを動かされ懸命の捜索?が始まった。

    早苗はそんな幸治の姿に寄り添う自分の気持ちを自覚し始めた。

    元から幸治は早苗の初恋の相手で(夢の中で会えるだけの相手ではあったが・・・)想いが心に溢れるのに時間は掛からなかったのだ。

    あちこちから資料を引っ張り出して探した結果、20年前の森田早苗と云う女性に対する捜索願が見つかった。

    コンピューターに入力されていない事案でその当時から資料として抜け落ちていた可能性があり、担当した警察官が恐縮した面持ちで謝罪して追跡調査に応援まで駆り出し午後には早苗の家族の消息が判明した。

    しかし・・・・それは、早苗にとって余りにも残酷な結果となった。


    「え~っと・・・・お探しの森田さん一家、森田和彦、陽子ご夫婦と次女の瑠璃子さんですが・・・・ご主人の転勤で東京から神戸に1993年に転居されていまして・・・残念ながら、1995年1月17日・・・阪神大震災に被災され、お三方共お亡くなりになっています。・・・残念な結果で申し訳ありません。」


    まるで自分の責任でもあるかの様に担当警察官が頭を下げた。


    「えっ?あの震災で・・・・」


    幸治は驚きでそれ以上言葉が出なかった。


    「・・・・亡くなった・・・って・・・みんなですか?・・・・」


    早苗は初めて聞く阪神大震災と云う響きに戸惑いながら、家族みんなが一度に亡くなった事が信じられなかった。


    「幸治君・・・阪神大震災って・・・」


    「あ、うん・・・凄く大きな震災で5000人以上亡くなったんだ・・・」


    それ以上掛ける言葉が見つからない。慰めようも無かった。

    しかし、早苗は気丈に振舞った。


    「そう・・・そんなに・・・私の家族もその中に・・・」


    応援を含めその場に居た警察官全員が頭を下げていた。


    「お忙しい中ありがとうございました。」


    早苗が深々と警察官に頭を下げ二人は警察署を後にした。





    警察署を出た二人を真夏の太陽が出迎えた。


    ジリジリと焼け付く日差しに早苗は顔を上げた。


    その頬には涙が溢れていた。


    それを見て・・・後ろから掛ける言葉もなく黙って歩いていた幸治は思わず早苗を抱きしめた。



    「大丈夫だよ!早苗さんは僕が守るから!必ず僕が守るから!」


    そう言いながら幸治はまたしてもあの強烈な既視感に襲われた。



    早苗は幸治のその言葉で全ての記憶を取り戻し、幸治の胸にすがって嗚咽を漏らした。

    やがて嗚咽は号泣に変わった。





    早苗も幸治もお互いこの世で一人きりだった。



    続く


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    こちらより




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