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    時の片~かけら  21

     05, 2012 07:00
    早苗が幸治の腕の中から消失して数年が過ぎた。


    早苗を再び失った幸治はその後諸熊教授の元、脳外科医として大学病院で勤務する傍らナイトヘッドの活動沈静化の研究を始めた。

    10年後、三度(みたび)早苗を失う事だけは絶対に避けたい。

    早苗との約束を守る為に幸治は寝食を忘れ研究に没頭した。



    諸熊教授以外は誰も早苗のタイムスリップを信じなかったが、そんな事は幸治にとって全く関係なかった。

    そのような態度で勤務するうち、いつしか変わり者扱いされ始め幸治の周りには誰も近寄らなくなった。

    それでも幸治が挫ける事はない。



    そして・・・時との約束の日が後1年と迫った年、遂に幸治はナイトヘッド活性化の原因物質を特定することに成功した。

    頭を強打することによりナイトヘッドにディープインパケットと云う悪玉タンパク質が瞬間的に異常増殖する事を突き止めたのだ。

    その後の研究でこの悪玉タンパク質を食べてナイトヘッドの活性化を抑えてくれる体内物質も新たに発見した。

    ここまでくれば服用薬の開発までさして時間は掛からなかった。




    そして・・・約束の日、2012年7月23日・・・幸治は30歳の誕生日を迎えた。



    その日幸治は朝一番で眼鏡橋に向かった。

    早苗が現れるのはこれまで2度の経験から夕刻である事は分かっていたが、それ迄呑気に待ってなどいられなかった。

    真夏の日差しが朝一番からジリジリと幸治に降り注いだ。

    だが、幸治にはそれさえも早苗との思い出として懐かしかった。

    早苗に会いたい・・・それだけが幸治の生きる支えになっていた。

    正午を過ぎるとますます日差しは強くなったが、幸治はその場所を動こうとはしなかった。

    そして・・・・遂にその時がやって来た。

    午後6時・・・・早苗との再会の瞬間・・・・






    だが、早苗は姿を現さなかった。




    幸治は動揺した。

    それでも待ち続けた・・・・ほんの少しだけ時がズレただけに違いない、と、自らに言い聞かせながら・・・

    しかし、午後7時、8時、9時・・・

    遂に日付が変わった。

    幸治は混乱してパニックに陥った。




    そこに連絡が来ない事に不審を抱いた諸熊教授がやって来た。


    「教授!・・・・どうして・・どうして・・・早苗さんは現れないですか?・・・」


    座り込み立ち上がれず、全身を震わせながら問いかける幸治を諸熊が抱きかかえた。


    「大丈夫だ、幸治君!彼女が死んだ訳ではない。きっと何かの法則があるんだ。それを一緒に考えよう!諦めちゃいかん!」


    諸熊の言葉に幸治も多少冷静さを取り戻し、諸熊に抱きかかえながら帰宅の途に着いた。





    その後数年に渡り二人で研究を重ねた結果・・・

    どうやらタイムスリップにも相対性理論が関係しているのではないか?と云う結論に達した。

    E=mc2(注:二乗です)


    2乗と云うところがポイントだと結論が出た。


    しかしながらその2乗に対する変数が二桁では無く十の位のみが関係しているのではないか・・・

    それが教授と幸治が、研究を重ねた結果出た結論だった。



    つまり、最初のタイムスリップは10年間の時を超えた。

    2度目も一見10年間のタイムスリップに見えるが実は最初の時から見ると20年間の時を超えたことになる。

    ここがポイントで、2度目のタイムスリップは10年間の十の位の数字が1、その2乗であるため1度目と同じく10年間の時空を超える。

    しかし3度目の今回は20年間の十の位の数字が2になる為、今回早苗が超える時空の年数は2の2乗の40年間になると云うものだった。

    早苗が次にあの眼鏡橋に現れるのは幸治の60歳の誕生日、2042年7月23日ということになる・・・・



    自ら導き出した結論に幸治は絶望した。





    諦めきれずにその後数年間は誕生日になると眼鏡橋で過ごす事が続いたが、再びの10年が過ぎた40歳の誕生日にも早苗が現れなかった事で、幸治はその運命を受け入れた。



    早苗がこの世界に戻った時に自分は60歳・・・早苗は22歳のままだ。

    その後の早苗の人生を犠牲にするわけにはいかない。

    今生で早苗と結ばれる事は諦めるしかなかった。


    しかし、早苗を助ける約束だけは何としても守りたかった。

    また、早苗を忘れる事も出来そうも無かった。




    そんな幸治を唯一分かっていた諸熊が友人の孫娘を幸治に引き合わせた。

    幸治の事情をキチンと話して聞かせた上での縁談だった。


    その女性はとても出来た人で・・・何もかも受け入れる覚悟を幸治に伝え、幸治が早苗との約束を果たすことを応援するとまで言ってくれた。


    幸治はその申し出を断る理由も無く、しばらくの付き合いを経て二人は結婚した。

    その後二人は、息子と娘を授かり平凡ではあるが穏やかな人生を過ごした。





    そして、その年・・・幸治が60歳になる年を迎えた。

    だが、神はあくまでも残酷だった。


    その年の初頭、幸治は体調を崩し検査を受けた。

    結果・・・・末期の肝臓がんで余命3ヶ月というものだった。


    「先生・・・私は、今死ぬ訳にはいかない・・・なんとか・・・夏まででいいからもたせてくれ・・・・」





    幸治の悲痛な願いだった・・・・

    もう1度、もう1度だけ・・・一目だけでも、早苗に会いたい・・・・

    早苗との約束を果たせずに死ぬわけにはいかない。




    続く



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    こちらより




    ご訪問ありがとうございました。
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    COMMENT - 4

    半世紀少年  2012, 09. 05 [Wed] 18:27

    NoTitle

    手塚治虫の「ガラスの脳」を読んでいるようでもあり
    ロバートFヤングの「たんぽぽ娘」を読んでいるような感覚に襲われます(笑)
    カミさんの実家が長崎…の佐世保ですが
    実家がやっていた学生下宿にいた方が報道カメラマンになり
    雲仙の噴火の時に犠牲になったと聞きました
    今年の大雨…熊本では知り合いが大変な目にあっていますが…人事ではないですね
    最終回、期待しています!!
    楽しみ楽しみ~

    Edit | Reply | 

    紫水  2012, 09. 05 [Wed] 22:37

    Re: NoTitle

    こんばんは。

    ご丁寧なコメントありがとうございます。

    お知り合い?にそう云う人がいるとは・・・
    残念な出来事ですねぇ・・・

    ご期待に添えるかどうかわかりませんが、自分ではお気に入りの物語に仕上がりました。
    よろしければ最後までお付き合い下さいませ。
    m(_ _)m

    Edit | Reply | 

    小町  2012, 09. 06 [Thu] 07:28

    年月とはw 

    残酷です --;)

    そそに すれ違うので あーーーればw

    何故に 2人を 遇わせたんじゃwwww

    ぅおおおw(T0T)w


    ・・・・
    w  --)ブツブツww

    Edit | Reply | 

    紫水  2012, 09. 06 [Thu] 19:56

    Re: 年月とはw 

    こんばんは。

    ふぉふぉふぉっ!
    悪魔です。
    (^O^)

    すれ違いこそが、恋愛の醍醐味・・・と、韓流ドラマに教わりました(笑)

    悲しい物語になりました・・・・?(^O^)

    最終回までお付き合い頂きありがとう(^▽^)ゴザイマース

    Edit | Reply | 

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