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    百鬼夜行抄 外伝 Ⅲ  2

     02, 2015 07:00



    夏休み期間のゼミの合宿から帰って来ると、家に通じる脇道に猫バスが止まっていた。


    なんとなく嫌な感じがしたが、まあ猫バスなんてしょっちゅう見かけるので(普通の人には見えないよ)あまり気にせず通り過ぎたけど、玄関開けたらサトーのご飯・・・じゃ無くて、妖気が家中に満ちていた。


    案の定、居間に入るとそこら中に物の怪がワンサカって感じで、朱雀を問い詰めるとネコ娘が怖くて頼まれるがままに家に入れてしまったらしい。



    「純ちゃん、今日ちゃん、オヤツの時間よ~」


    居間から母の声がした。


    20歳を過ぎた息子と娘にオヤツの時間も無いもんだが、母もやっぱりちょっと変わっていて普通の家庭じゃどうのこうのと言っても「そんなの関係ないわよ」の一言で片付けられる。


    親父は親父で変わりもんで未だにトレジャーハンターを気取ってアチコチ旅して年中家を空けている。


    あ、話が横道に逸れたが・・・・兎に角、我が家は普通の家じゃ無いって事。


    「は~い、今行く~」


    朱雀が僕に叱られるのから開放されようとこれ幸いに居間へすっ飛んで行った。


    仕方なしに僕も居間へと向かったが正直気が重い。


    「さあさあ、純ちゃんも早く座って召し上がれ。」


    母さん特製のお好み焼きだ。


    これまたおやつにお好み焼き?と思われるだろうが、我が家では普通の事なのだ。


    むっつりと食べてると物の怪の一人が声を掛けてきた。


    「坊っちゃん、幸せだね~、優しいお母さんとかわいい妹さんで。」


    「はあ・・・・」


    「もう、純ちゃんたら!・・ごめんなさいね~愛想なくて。」


    「イヤイヤ・・・この年頃の男の子はそんなもんですよ。」


    普通に話してるけどホントはそいつ物の怪なんだよ!って言ってやりたい処だが、実は物の怪って本人はまだ生きているつもり(死んでる事に気がついていない)なんだよな~。


    なので、死んでる事を理解させるのに一苦労するんだ。


    で、面倒くさいからほっとく事にした。


    素知らぬ顔で観察してみたが、人の良さそうな老夫婦(チョコチョコ声をかけて来てるばーさん夫婦)、大人しそうな若夫婦とその子供、ちょっと根暗っポイ中年オヤジと一人ちょっと異質な感じの剣呑そうなおばさんの6人と完全な妖怪が1匹で全部のようだ。


    厄介そうなのは、剣呑なおばさんと妖怪だけであとはその気になればさっさとあの世に送れるけど、猫バスの乗客を勝手にあの世に送ると後が面倒そうなのでやめといた方がいいだろうなぁ~。


    なんて事を考えながらお好み焼きを平らげていると、妖怪が徐ろに立ち上がったのでちょっと警戒。


    「スイマセン、ちょっと洗面所を・・・・」


    「あ、はい、はい、この廊下を行って突き当りを右に行ったとこです。」


    う~ん・・・この妖怪、母にはどんな感じに見えてるんだろ。


    ヒソヒソ・・・

    「おい、朱雀。」


    「うん?な~に、おにま。」


    「この連中、いつまで居るんだ?」


    「え~っと・・・・猫バスの修理が終わるまで。」


    「・・・だから~、それがいつまでかって聞いてるんだよ。」


    「そんな事私に聞かれたって・・・・」


    「なんだ、どのくらい掛かるかくらい聞いてないのか?」


    「だって~・・・・猫となんか少しでも一緒に居たくないんだもん・・・」


    「チッ、使えねー奴だな~!」


    「ひ、ひどい~~~、あんまり苛めると泣いちゃうから~」


    「ふん!勝手に泣いてろ!」


    「・・・・・ぅ・・・・え~~~ん・・・」


    あ、ホントに泣きやがった・・・



    「ちょっと、純ちゃん、今日ちゃんになにしたの!」


    「えっ?いや、何もしてないよ!」


    「うえ~ん・・・・おにまが苛めるの~・・・え~ん・・・」


    おい、こら!


    「純ちゃん!」


    「あ、いや・・・」



    あ~~~!この!泣きながら舌出してやがる!嘘泣きだ!



    「まあ、まあ、兄妹喧嘩なんて仲の良い証拠ですよ、奥さん。」


    「はあ・・・まあ、確かに喧嘩しながらもいつも一緒に居るんですよ。」


    とかワイワイしてる時も剣呑ばーさんはむっつり、何故かこちらを時々睨む・・・


    ちょっと気掛かりな感じで問い詰めてみようかな、と思っていたところに玄関から声がした。



    「スイマセ~ン・・・・」


    「あら、運転手さんかしら?・・・は~い・・・」


    母が腰をあげようとしたのを制して僕が応対に出る事にした。


    「ああ、いい。僕が行く。」


    「あら、ありがと、じゃあ、お願いね。私は残ってる分焼き増ししなくちゃ。」



    まあ、ちょっと面倒くさかったが思ったより早く済んだな、と思いながら玄関へ応対に出た。


    しかし、そこには聞いていたネコ娘では無くトロール(まんがの世界じゃトトロと云うらしい)が立っていた。


    ホントの運転手はトロールでネコ娘は車掌さんってとこなのかな。


    さすがにあの世と繋がってるバスには乗ったことが無いので詳しくは知らなかったのだ。


    兎にも角にもこの面倒くさい客達を送り出せる事に安堵していたのだが、そう甘くは無かった。



    「はい、お待たせしました」


    「どうも、お世話になってます。」


    「はあ、修理は終わられたんですか?」


    「・・・それが、ちょっとマズイ事態になりまして・・・・」


    「・・・どういう事ですか?」


    「完全に壊れてしまいまして、代替車が来るまでもう少しお願いしたいと・・・お願いに伺いました。」


    「はあ?嘘でしょ?猫バスでも壊れるんですか?」


    あ、しまった!


    「えっ?・・・猫バス・・・見えるんですか?」


    あちゃ~~・・・・


    「ああ・・・・はいまあ・・・・」


    「それなら話は早い。ひとつ、乗客をよろしくお願いします。」


    「う~~~ん・・・あの・・・面倒くさくなったら、あの世に送っちゃいますけどそれでも良いですか?」


    あ、また、口が滑った・・・・



    「えっ?・・・そんな事までお出来になられるんですか?」


    ・・・あああ・・・隠すの面倒くさいからもういいや・・・


    「あ、はい・・・なんでしたトロールさんも送って差し上げましょうか?」


    「イヤイヤ・・・ご勘弁下さい。・・・そ、それではひとつよろしくお願いします。」


    あらあら・・・冗談なのに逃げちゃった・・・・


    さてさて、どうしたもんやら・・・・





    閑話休題
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