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    終末の予定 3

     19, 2016 07:00


    前兆 The Omenn(2)





    死亡診断書



    1994年 3月3日


    氏名 八満 伊縫 (はちまん いぬ)・・・旧姓 田宮 伊縫

    (中略)

    死因 全身打撲、及び死産による失血性ショック死

    (中略)

    担当 聖グレゴリー病院 医師 ベッカー




    田宮 杏(出生時 八満 杏)は1988年6月6日午後6時、聖グレゴリー病院にて生まれた。

    聖グレゴリー病院は在日米軍家族や訪日外国人の為にマリア会(キリスト教会の一組織)によって設立された。

    通常は外国人専用の施設ではあったが母が所属の看護師であった為その利用を許され、聖グレゴリー病院で誕生する事となった。


    「八満さん、おめでとう。可愛らしい女の子ですよ。」


    看護師長が生まれたての杏を抱きかかえそのまま伊縫の腕の中へ渡した。


    「ありがとうございます・・・赤ちゃん・・・私の赤ちゃん・・・・」


    「・・・・もうお名前は決まっているの?」


    杏を覗き込みながら看護師長が伊縫へ問いかけた。


    「あ、はい。主人が女の子なら”杏”って決めていました。・・・テレビで子役の鈴木 杏ちゃんが可愛いからって・・・ふふふ。」


    「あら?じゃあ、女優さんになるのかしら?おほほ・・・」



    その後杏が5歳の誕生日を迎えるまでは父八満仁寫(ひとし)と母(伊縫)から全ての愛情を注がれ幸せな日々を送っていた。

    しかし・・・・・

    杏が5歳の誕生日のお祝いの席で母が父、杏に嬉しい報告があると言い出した。


    「パパ、杏ちゃん、・・・あのね、杏ちゃんに弟か妹が出来るの・・・・」


    「えっ?本当に!!!わ~~~~!」


    父が喜び母を抱きしめた。


    「杏、お姉さんになるんだって!良かったなぁ~。」

    母の後に杏を抱き締めながら杏に微笑みかけた。


    「・・・・うん・・・・」


    「あら?杏ちゃんは嬉しくないのかしら?」


    母が笑いながら杏に問いかけた。


    「ううん、嬉しいよ。杏もお姉さんになりたい。」


    ニッコリ笑いながら母へ返事を返したが、実のところ杏は全く嬉しくなかった。

    幼稚園の友達を見ていても一人っ子の方が断然可愛がって貰っているのを知っていたからだ。

    案の定その日から家庭の中心は母のお腹の子へと移って行った。

    しかも母がマタニティーブルーになった為事ある毎に杏に厳しくなった。


    「杏ちゃん!!ちゃんとお片付けしなさい!」

    「杏ちゃん!!お姉さんになるのよ!お洋服くらい自分で着なさい!」

    「杏ちゃん!!夜遅いのよ、さっさと寝なさい!」

    「杏ちゃん!!パパはお仕事で疲れてるの!自分ひとりで遊びなさい!」


    いつしか杏は母を憎む様になった。

    そして母は臨月を迎えた。

    そんな或日・・・・・


    「杏ちゃん、お買い物に行くからお着替えして。」


    母が臨月近くなって来た頃から買い物の荷物持ちは杏の仕事になった。


    「お姉さんになるから、お母さんのお手伝いしてね。」


    母の願いを聞くのはもうウンザリだ。

    杏はいつからかチャンスを伺うようになっていた。

    近くに誰もいない時・・・・・


    その日はいつもより沢山の買い物をして母も杏も手荷物で両手が塞がっていた。

    自宅は横須賀市の高台にあり、近くのスーパーから家に帰る途中にかなり長い階段があった。


    「ふ~、この階段は本当にキツイわね~。ふ~・・・」


    「うん・・・・」


    息を切らしながら2人で登り切る寸前、杏は周囲を見回し近くに誰も居ない事を確認した。

    初めての・・・そして最後のチャンスだ。

    杏は階段に足を取られたふりをしながら・・・・


    「きゃ~!!!」


    前へ倒れ込みながら全身の体重と力を振り絞り思いっ切り母のスカートの裾を引っ張った。


    「ちょっと杏!だめ・・・・きゃ~!!!」


    母の両手からレジ袋が宙に浮いた。

    一気にバランスを崩し、母の体は階段を転げ落ち始めた。


    「きゃ~~~~~~~~~~!!!!」


    母の悲鳴が閑静な住宅街に響いた。


    「ママ~~~~~~!!!!え~~~ん!!!!」


    杏の泣き声がその後続く。


    それを聞きつけ近所の人々が飛び出して来た。



    「た、大変!!!誰か!救急車を呼んで~!」

    辺りは一瞬にして騒然となった。


    「え~ん!!!!ママ~~~~~~!!!!」


    その喧騒の中も杏の泣き声が近隣に響き渡る。




    しかし・・・・・泣き続けながらも杏の口元はほころんでいた。




    階段の下には、その杏の様子を呆然としながら見上げる八満仁寫の姿があった。





    閑話休題
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