スポンサーサイト

     --, -- --:--
    上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
    新しい記事を書く事で広告が消せます。

    終末の予定 4

     20, 2016 07:00


    前兆 The Omenn (3)



    死亡診断書


    1994年 3月4日

    氏名 八満 仁寫

    (中略)

    死因 脳挫傷(銃創によるもの)

    (中略)

    担当 聖グレゴリー病院 医師ベッカー






    八満仁寫は幸せな人生を送っていた。

    優しい妻と可愛い娘、さらにもうすぐ新しい家族が増える。

    今日も早めに仕事が終わったので寄り道もせず真っ直ぐ家に帰るところだった。

    家の近くまで来ると最後の難関の階段が目の前にそびえ立った。


    「ふ~・・・これさえなければ天国なんだけどなぁ~」


    独りごちて階段の頂上を見上げると丁度頂上辺りに愛する妻と娘が・・・階段を登りきろうとしているところだった。

    声を掛けようとしたその瞬間妻の体が宙に浮き手荷物と共に落下した。

    妻の悲鳴と娘の泣き声が辺りに響き渡った。

    妻の体はそのまま長い階段の中間地点の踊り場迄転がり落ちた。

    踊り場に倒れている妻の白いマタニティー服は真っ赤に染まっていく。

    さらに甲高く娘の泣き声が辺り一面に響き渡る。

    その声に驚いた近隣住民が集まりその場はあっという間に騒然となった。



    しかし・・・・・

    大声で泣き叫ぶ娘の口元はほころんでいた。

    笑っている。

    そんなはずはない。

    娘がわざと母を引き落とすなんて・・・私の見間違いだ。

    しかし、泣きながら微笑んでいる娘の顔を見上げながら八満仁寫はその場から一歩も動くことが出来なかった。


    いち早い近隣住民の通報でかなり早く救急車は到着したが見るからに妻の状態は重篤であった。

    娘と共に同乗し病院へ着いた時には妻は危篤状態であった。

    出血があまりに多過ぎた。

    待合室で手術を待ちながら妻の無事だけを祈った。

    隣で娘の杏も同じように妻の無事を祈っていた。


    「ママ・・・ママ・・・死んじゃ嫌だ・・・ママ・・・」


    ああ・・・やっぱりさっきのは私の見間違いだ。

    娘はこんなにも母を愛している。


    「杏、大丈夫だ。ママはきっと大丈夫だ」


    杏は私を見上げながらそっと呟いた。


    「ほんとうに?・・・ママ・・・死んじゃわない?」


    「ああ・・・絶対大丈夫だから・・・」


    伏目がちに杏がつぶやいた。


    「・・・・ちぇ・・・・」


    ・・・・私は耳を疑った。いや、今のは聞き違えだ。そんな事を杏がつぶやくはずがない。


    「・・・杏、今、なんと言ったんだい?パパよく聞こえなかったんだ。」


    「ん?な~に?杏、何も言ってないよ」


    「あ、そうかい・・・そうだね、パパの空耳かもしれないね。」


    「空耳ってな~に?」


    「あ、それは・・・」


    答えようとした時に手術室の扉が開いた。

    術着を脱いだ医師がこちらへ近寄って来る。


    「先生・・・妻は・・・・」


    「全力を尽くしましたが・・・・力足らずで申し訳ありません。」


    「うをお~~~~~~~~!!!!」


    八満仁寫は咆哮した。

    父の脇腹に顔を埋めながら杏も泣き声を上げた。




    しかし、杏のその口元は再びほころんでいた。




    閑話休題
    関連記事
    スポンサーサイト

    COMMENT - 0

    上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。