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    終末の予定 8

     24, 2016 07:00




    拡散  pandemia (3)



    輝夜 媛(かぐや えん)は福島の田舎町で生まれ育った。

    実家は旧家で地元では名士の部類である。

    元々の家業は名主と呼ばれる豪農であったが、高度成長期以降、時勢に乗り機器メーカーの下請け(地場では大手の部類になる)工場を経営していた。

    バブル期に中央の大手、F通信が進出し更に規模を拡大した。

    しかし・・・・ご多分に漏れずバブルの崩壊とその後の長期に渡る景気低迷により経営は傾き、媛の中学入学と時期を同じくして倒産の憂き目にあった。

    1年近く続いた毎日の取り立てに苦しみ、将来を悲観した媛の両親は工場内で夫婦共々首をくくった。

    両親の死後は近くの親類の家に一旦は引き取られた媛であったが・・・・

    ・・・・・何故、その日、媛だけその惨劇から逃れられたのか・・・・

    口さがない人々は色々な噂で、その後、媛を苦しめた。

    それを見かねた祖母が媛を引き取る事になり、媛は故郷を離れることになった。

    転居先の祖母の家でも媛はふさぎがちであった。

    しかし転校の手続きが済み新しい中学へ通うようになってからいい先輩や同級生に出会ったらしく明るさを取り戻していった。





    中学編入と共に媛はその美貌で一躍学内の注目の的になったが、転校の事情が事情なだけになかなか友人が出来るものでは無かった。

    そんな或日、帰り道の公園で、ある女子高生に声を掛けられた。


    「こんにちは。あなた、今度転校して来た輝夜さん?」


    「あ、はい・・・・・。」


    訝しげにそちらへ踵を返した。


    「突然ゴメンナサイね・・・私は田宮 杏って言います。ちょっとお話しない?」


    「あ、はあ・・・・何でしょうか?」


    指し示されたベンチへ腰を掛けて相手の言葉を待つ。


    「あ、あなたのことは従兄弟の安倍 美於士、あなたの同級生よね?その子から聞いたの。」


    ああ・・・確かに同じクラスにいる(時々自分の事を眺めている)男の子がそんな名前だった。


    「はあ・・・・それで、どういった御用ですか?」


    「・・・・うん、まあ・・・そんなに警戒しないで・・・ふふふ・・・」


    きっかけはそんな感じだった。

    杏先輩は自分も同じ境遇で越して来たらしく私の心配をして声を掛けてくれた様だった。

    その後も何かと気を使って貰ったり、その従兄弟とも仲良くなったりで孤独感からはおかげで開放された。

    その後は従兄弟の安倍美於士と段々親しくなり付き合う形となった。

    ただし・・・・私は完全に本気で彼を好きになった理由では無かった。

    行き掛かり上そうなった、そうなった方がここで生きていくのに(口さがない噂から守ってくれる田宮 杏の側にいる為に)都合が良かったのだ。


    なので、美於士にキス以上の行為は絶対に許さなかった。

    時々、キスしている間に美於士が胸を触ってきたりしたが・・・


    「・・・ダメ・・・そういう事はしないって約束したじゃない。」


    「あ・・・・ごめん・・・つい・・・」


    「そういう事するなら、もうお付き合い出来ないわ・・・・」


    「あ、ごめん・・・ホントにごめん・・・もうしないから・・・」


    「ほんとに?・・・約束よ・・・・」


    「わかったから・・・・もうしないから・・・」


    そうは言いつつ、時々同じ会話をすることにはなったが、まあ、それは思春期の男の子にしたら仕方のない事だとは思う・・・なので大目に見てやっている。

    そんな感じで少女期思春期を3人で過ごしていった。




    安倍 美於士は安倍 静江の長男として生まれた。

    父のことを詮索するのはタブーになっている。

    近くに住んでいる祖母に以前隠れて聞いた事があったが、普段はにこやかな祖母の顔が急に強張ったのでそれ以上続ける言葉か無かった。

    祖母の家に住んでいる従姉妹の杏は気立てが良く評判の孝行娘であった。

    しかし、その実際の姿を知っているのは美於士だけだった。

    杏を見掛けると吠えることをやめないうるさい犬が突然消えたのは何故か・・・

    杏に言い寄った二股男が修学旅行中に当然行方不明になったのは何故か・・・

    杏の周りは全く杏の関わりを疑わなかったが、(杏が何故か自分だけに見せる杏の裏の顔から)美於士は杏の犯行を確信していた。

    だが、別にそんな事はどうでも良かった。

    杏の側にいることが美於士にとってとても心地良かったのだ。

    ほとんど記憶が無い幼少の頃から杏に虐げられ続けていることも、いや、それこそが心地良かった。

    美於士は生来のマゾ気質であった。


    中学生になり、ある日転向してきた少女に美於士は恋をした。

    寝ても醒めてもその子のことばかり考え何も手が付かない。

    どうしても自分のものにしたかった。

    しかし・・・・・彼女は自分には釣り合いが取れないほど美しく気高かった。

    美於士は杏に泣きついた。

    どうか輝夜 媛との仲を取り持って欲しいと懇願した。

    普段の杏だったら軽く受け流して素知らぬ顔、と云うところだと思っていたが、何故か積極的にそれを引き受けてくれた。

    おかげでそれから暫くして美於士は媛と付き合う事になった。

    キス以上は結婚までお預けと云う条件が付いたが、そんな事は全然構わない。

    媛をわがものと出来た喜びは何もにも代え難かった。

    だから・・・・杏が大学進学時に祖母を殺害したであろう事を直感的に悟ったが一切口の端にも乗せなかった。


    「あんたもちゃんと勉強して医大に来るのよ。まだ色々役に立って貰わないといけないから、ずっと側にいなさい。解ったわね。」


    杏が進学で引っ越す時に受けた・・・・命令だ。





    勿論、杏姉ちゃんの側を一生離れやしない。

    例え・・・杏姉ちゃんに殺されても・・・・・




    閑話休題
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