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    終末の予定 10

     26, 2016 07:00




    侵食 Erosion (2)



    輝夜 媛 は18歳になった。

    校内は勿論近隣の高校でも評判の美しさで周りを魅了していた。

    その媛が安倍美於士と付き合っていることを誰もが訝しげに思っていたのは無理からぬ事だった。

    (媛の転校時の状況や家庭環境等を高校時代の級友等は知らなかった)

    媛自身も杏が医大進学でこの地を離れた時点で美於士との付き合いを続ける必要性が無くなったことは解っていたが、中学から3年近く媛が出した「キス迄条項」を律儀に守る美於士を憎からず思い始めていたのだ。

    恋愛感情は一切無かったが、ある種の情・・・そう、ペットを大事に思う愛情と同じ様な感情を持ち始めていた。

    その為周りからどんなに不思議がられても美於士と別れることは無かった。

    媛と美於士は穏やかな高校時代を過ごし、杏の後を追うように杏のいる医大へ進学した。



    医大進学後は再び杏と媛と美於士の3人はまるで家族のような関係に戻った。

    それから4年間は何事も無く楽しく過ごしていた。

    その関係性が徐々に変化し始めたのは、杏が研修医として勤務を始めて、暫くのちに同じ大学病院の外科医で大学の講師の藤原史に恋をしてからだった。

    常に3人で釣り合いを保っていた関係性が異分子たる史が入ることにより崩れ始めた。

    それが顕著になり始めたのは史が杏に金の無心をしている事に媛と美於士が気が付いてからである。

    媛と美於士はさり気なくその危険性を杏に伝え続けたが、あの杏が全く聞く耳を持たぬ状態になってしまった。

    その頃・・・・媛は子供の頃のトラウマから人間不信に陥り人を愛する事が出来なくなっていた自分が・・・・生涯独身でいるつもりであった自分が美於士との生活を望み始めていることに気がついた。

    付き合い始めて8年勝手な「キス迄条項」を律儀に守る(たまに暴走する事もあるが)美於士が少々不憫に思えて来た。

    3ヶ月後の美於士の誕生日のプレゼントには・・・そう思い始めていた。

    そういう時期にあの事件は起こった。




    安倍美於士は媛と付き合い始めて既に8年を過ぎていた。

    媛の厳しい「キス迄条項」さえ惚れた弱みで守り続けてきた。

    たまに暴走して胸まで手が伸びたりしたが、「そんな事するならもうお付き合い出来ません」の一言で萎縮してしまいその先に踏み出す事が出来ずにいた。

    ある日、久しぶりに杏と2人で飲んでいた時、ついポロリとその事を口にしてしまった。


    「えっ?・・・嘘でしょ?・・・8年も付き合ってキスだけなの?」


    「あ・・・しまった、つい・・・・」

    「・・・あんた・・・ホントにバカじゃないの?」


    そう言いながら杏は笑っていた。


    「・・・・そう言わないでよ・・・惚れた弱みって言うか・・・ダメだって言うからさ~」


    「・・・呆れた。あんたちゃんと付いてんの?」


    「付いてんのって・・・ヒドイなぁ~」


    「仕方無いわねぇ~・・・・解った・・・私に任せなさい。」


    「えっ?・・・任せなさいって?・・・・」


    「良いから・・・まあ・・・まともなカップルにしてあげるわよ」


    「・・・・うん・・・」


    美於士は「どうやって」と言う言葉が出てこなかった。

    口にしたら恐ろしい事が起こる予感がしたのだ。




    2014年 6月6日

    杏の26歳の誕生日、4人で誕生会を開いた。

    楽しく過ごしていた4人であったが宴も酣と云う時に媛はかなり酔ってしまい意識が朦朧としてきた。


    「・・・あれ・・・そんなに飲んで無いのに凄く酔払ちゃったみたい・・・」


    「あらら・・・媛ちゃん大丈夫?・・・」


    「あ・・・・はい・・・う~ん・・・・どうしよう・・・杏さん・・・せっかくのお祝いなのに・・・ゴメンナサイ・・・・」


    「・・・あらあら・・・気にしないで良いわよ・・・美於士、媛ちゃん送ってあげなさい」


    「あ・・・うん・・・」


    「あ・・・大丈夫です・・・ひとりで帰れます」


    そう言いながら立ち上がろうとした媛であったが足元もおぼつかなくなっている自分にちょっと驚いた。

    立ち上がる事さえ出来なくなっていたのだ。

    完全に酔っぱらってしまっていると思った。


    「ごめらしゃい・・・・だめいらいでしゅ・・・・」


    「おい、これは本当にダメだぞ、美於士君、送ってあげなさい」


    藤原 史の声が既に夢の中の声に聞こえた。

    その後の意識、記憶は全く無い。




    媛の意識が戻ったのは自分の下腹部に強い痛みを感じ無意識に悲鳴を上げた時だった。

    媛が目を開けると真上に美於士の顔があった。

    美於士の激しい息遣いと下腹部の痛みが連動していた。

    何が起こっているのか媛は悟った。


    「いや~~~~!!やめて~~~~!!!」


    声にならない叫び声を上げたが、美於士の暴走を止める事はもう出来なかった。

    事が済んで美於士が媛を抱きしめてきたが、もちろんそれに媛が応える事は無かった。

    抱きしめられながら媛は何故そんな事になったのかじっと考えた。






    杏の部屋から媛をおぶって帰ろうとした時、見送りに出てきた杏が美於士の耳元で囁いた。


    「媛ちゃんは何をしても暫くは起きないわよ。・・・言ってる意味は解るわよね?」


    美於士を見る杏の笑顔が・・・あの何かを決意した時に見せる笑顔だった。

    美於士は媛がどうしてこんなにフラフラな状態なのか悟った。

    媛のグラスに何かの薬を盛る杏の姿が目に浮かぶ。

    それが決して美於士のためでも、媛のためでもない事は解っていた。



    しかし・・・・・美於士は自らの欲望に勝てなかった。

    事の途中で媛が気が付き抵抗の素振りを見せたが、薬の効き目から覚めていないようで媛の体は力が入らない状態だった。

    抵抗されたからと言って、今、その状態でやめてしまうことは媛との関係の終わりを告げる事と同意義である。

    兎に角、事を済ませこの関係を既成事実化しなければ媛を失う。

    欲望と願いが美於士をそのまま最後まで突き進ませた。



    しかし・・・・・それは4人を破滅へと導く悪魔の所業であった。




    閑話休題
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