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    終末の予定 14

     30, 2016 07:00



    破滅 catastrophe (4)


    美於士から相談を受けてから2週間ほど過ぎた頃、媛が帰ってきて許しを貰ったと連絡が来た。

    杏は同じ女として媛が美於士の陵辱をそう簡単に許すとは思えなかったが、2人に対して関心を失いかけていた時期であったためそれ以上深く考える事もなかった。

    それより史との結婚が現実味を増していたので杏の頭のなかはそれで一杯になっていた。

    それからも史からの金の無心はちょくちょく続いてはいた。

    それと比例して史の家族との交流も増えてきていたので史の気持ちを疑う事など考えもしなかった。

    しばらくは変わりなく時が過ぎていった。

    しかし秋が深まりだした頃、少しづつ史の態度が変化して来た。

    杏は付き合う前から史の女癖が良くない事は知っていた。

    それも無理からぬ事だと思っていた。

    魅力的な人間は得てしてそうなる。

    史の様に素敵な男を世間の女が放おって置くわけがない。

    恋は盲目とは良く言ったもので、杏は史の悪い面さえ魅力と見えてしまっていた。

    なので・・・

    秋口から多少、史の周りに女の影がチラつき始めても杏は動じる事はなかった。

    自分たちは同じ将来を見て進んでいるのだと信じて疑わなかった。

    媛は杏のその自信に付け込んで徐々に徐々に史の全てを奪い始めていた。


    年が変わり2015年 春、杏は研修を無事終了し正規の医師として勤務を始めた。

    昨年、本院から左遷されてきた女性教授のいる研究室での作業も経験を重ねることで手際が良くなり、先輩医師の信任も得るようになっていた。




    そんな或日・・・・

    久しぶりに4人で食事をしようと美於士から連絡が来た。

    病院の近くのレストランで待ち合わせた。

    レストランへ行く途中の通り道にコーヒーショップが新しくオープンしていた。

    全面ガラス張りの明るい店の様だ。

    レストランへの道すがら何気無くその店内を眺めると其処に媛の姿があった。

    媛は向かいの男から封筒を受け取っていた。

    その封筒は昨夜、杏が史へと渡した300万が入った封筒だ。

    杏は海外のメーカーにお気に入りの文具があり、そのメーカーから封筒も取り寄せているので自分が使っている封筒だと一目で解った。

    封筒を受け取った後、相手の男の手に自分の手をそっと重ね、男を笑顔で見つめる媛。

    相手の男は紛れも無く史であった。

    杏は暫し呆然とその場に立ち尽くした。


    「史さん・・・・何故?・・・・・」


    そう呟いた杏の声は震えていた。

    束の間の後、史が媛に奪われた事を理解し、杏は戦慄した。



    待ち合わせのレストランにその2人が揃って現れた時、杏は素知らぬ顔で迎えた。

    美於士と楽しげに話しながら笑顔で遅れてきた2人と対峙した。


    「遅いよ、媛ちゃん。自分から誘っといて。・・・藤原さんこんにちは。」


    美於士の言葉に史は只黙って会釈を返した。


    「媛ちゃんこんばんは、久しぶりね。どう、研修医になって・・・忙しいでしょう?」


    「あ、はい・・・まだ慣れなくて・・・・。」


    杏の態度に媛は少し焦燥感を覚えた。

    確かに杏はテラスの向こうから私達の姿を見たはずだ。

    封筒を受け取る時、ちゃんと横目で杏の視線を確認した。

    それなのに何故平然としているのか?

    媛は本当の杏の恐ろしさを知らなかった。

    狐が悪魔に復讐しようなどと思うべきでは無かったのだ。

    その時には杏の気持ちはもう固まっていた。

    後は方法を探すだけ。



    杏はまだ史を見限った理由では無かった。

    媛さえいなくなれば史は自分の元に戻って来るはずだと信じていた。

    媛が美於士の陵辱の原因が杏にある事に気付き自分への復讐から史を奪った事は理解出来る。

    理解は出来るがそれをおいそれと許すつもりは無い。

    と、云うか・・・・私の物を奪う奴は生かしてはおかない。

    そう、私はそうやって生きてきたのだ。

    杏がそう考えながらその手段を探していた時、史の父が突然内密に会いたいと言ってきた。

    史が父を使って自分との縁切るつもりかと疑いながら会いに出掛けた。


    「やあ・・・忙しいところ申し訳無いですね。・・・どうぞ、掛けて下さい。」


    「こんにちは。いえ、大丈夫です。今日はどういったご用件でしょうか?」


    「はあ・・・・ちょっと話しにくい内容なのですが・・・。」


    杏は警戒の色を強めた。

    もし史との仲を裂くような事を言い始めたら父親だとしても許さない。


    「・・・・何でしょう?・・・私が何か・・・・」


    「いや、そうでは無いのです。私の方が問題でして・・・・」


    「どういうことでしょうか?・・・・なんでも遠慮なく仰って下さい」


    「・・・ええ、あの、杏さん、ご両親は横須賀にお住まいではありませんでしたか?」


    「あ、はい・・・そうです。私も両親が亡くなるまでは横須賀に住んでいました。」


    「そうですか・・・・あの・・・・お母様は・・・グレゴリー病院にお勤めではありませんでしたか?」


    「えっ?・・・はあ、そうです。何故それを?」


    「う~ん・・・・やはりそうでしたか・・・・。」


    史の父は正に進退窮まった様な険しい顔になった。


    「・・・どうされました?私の母の事が何か問題なんでしょうか?」


    「・・・・いや・・・その・・・以前、あなたが私の知ってる方によく似ていらっしゃるとお話したことがあると思いますが・・・」


    「あ、はい、初めてご自宅へお邪魔させて頂いた時そうお伺いしたことが・・・」


    「・・・うむ、そうですね。その、よく似た女性なんですが・・・多分、あなたのお母様だと思います。」


    「えっ?そうなんですか?・・・ちょっと驚きました。」


    「そうでしょうね・・・その頃私は製薬会社に勤めていまして、仕事でちょくちょくグレゴリー病院へお邪魔していたんです。」


    「はあ、そうなんですか・・・。それは、不思議な御縁ですね。」


    「・・・いや、それが、そう単純な問題じゃなくて・・・・。」


    「すいません、お父様。はっきり仰って頂けませんか?本題は何なんでしょうか?」


    「・・・うむ、そうだね、はっきり言おう。・・・その頃私は君のお母さんと付き合っていたのだ。」


    「えっ?えっ?・・・・母と・・・・」


    「そう、その頃はまだ史達は京都に住んでいて、私だけ単身赴任していたのだ。それで寂しかったのもあるが、伊縫さんの美しさに本気で恋をしたのだ・・・・。」


    「・・・・母と不倫していたんですね・・・・。」


    史の父を刺すような目で見つめた。


    「ああ・・・・そうだ・・・・済まない、いや、今更謝ってもどうしようもないが・・・・。」


    そう、どうしようもない。


    「それで、私にどうしろと?」


    「・・・・いや・・・どうしろと云う事は無いんだ。杏さんがもしそのことを後々知る事になったら傷つく事になるかもと思い、それなら私の口から伝えておいた方が良いと思ってな・・・・。ホントに申し訳無かった・・・」


    「・・・解りました・・・・もう結構です。ただ、その事は史さんには絶対に内緒にして下さい。お願いします」


    「ああ、勿論わかっている。誰にも口外はしない。」


    「・・・よろしくお願いします。・・・ああ・・・そうそう、お父様、お父様の血液型は何型ですか?」


    「うん?血液型かい?」


    「ええ・・・今日の血液型占いでB型の人の運勢が悩み事解決するとかだったんでもしかしたらって・・フフ・・・。」


    「ああ・・・そうなのか~。そう、私もB型だ。うん、その占い当たっているね。」


    「ふふふ・・・そうですか。・・・・では・・・スイマセン、正規の医師になったばかりで仕事が片付いていなくて・・・お先に失礼させて頂きますね。」


    「ああ・・・忙しいのに悪かったね・・・。史をよろしく頼みますね。」


    「はい、こちらこそ、これからもよろしくお願いします。」


    満面の笑みを史の父へ投げかけた。




    不倫した母の血液型はO、父もO、杏はB・・・父は実の父では無い。

    不倫していた史の父の血液型がB・・・・

    史と杏は異父兄妹と云う事だ。

    杏は自分が史を無条件に愛する理由を初めて理解した。




    兄と交わった妹・・・・・

    今更ながら母の穢らわしさを杏は怨嗟した。




    閑話休題
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