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    終末の予定 15

     31, 2016 07:00




    破滅 catastrophe (5)



    史が杏の異父兄妹と知ってからも、杏は変わらず史との付き合いを続けていた。

    もっとも金を出さなければその日は会うだけ、金を出した時だけ史は杏を抱く。

    その金は今度は史が媛を抱く時に媛に渡す金になる。

    そんな事は百も承知で杏はその関係を続けていた。

    全てはその時のためである。


    しかし・・・・・杏は少し焦っていた。

    その時を迎える方法が見つからないのだ。

    母や祖母と同じ手段を使うには危険が多すぎた。

    媛は杏の正体に気がついているはずだから、下手をすれば墓穴を掘りかねない。


    そんな時・・・・

    神が杏に手を指し延べた。いや・・・神では無いか・・・・


    濔 教授がPCのスイッチを切り忘れて講義へ出かけようと研究室を出るところへ偶々杏が居合わせた。

    杏一人取り残された研究室で濔教授の研究を横取りする事は難しくはなかった。

    杏はその痕跡を残さない為だけに濔教授を消し去った。

    杏は初めて何の恨みも無い人間を殺した。

    そうしてやっと杏は念願のその日を迎える事が出来た。



    2015年 6月 6日



    「ねえ、今日は杏さんの誕生日だからこの後はいつもの年の様に杏さんのお家でお祝いしましょう。」


    春先以来久々4人揃っての食事会で媛が言い出した。

    杏にとっては渡りに船である。


    「う~ん・・・・たまには媛ちゃんのお家で飲まない?媛ちゃん、お酒弱いからその方が良いでしょ?」


    杏が暗に昨年の出来事を媛に思い出させる様な事を言った。

    それに慌てたのは美於士だった。

    これ以上媛を刺激したく無かったので媛が返事するよりも早く・・・


    「そ。そうだね、たまには媛ちゃんの家に遊びに行きたいし。」


    「・・・・そうだね、僕もまだお邪魔したこと無いから一度ご招待してもらいたいな。」


    史の言葉は真っ赤なウソだったがそれには気づかぬふりで杏は頷いた。

    3人共にそう言うので媛も仕方無く頷くしか無かった。

    しかし、媛も今日はその胸に秘める事がある。


    「わかりました。じゃあ、皆さんお招きします。一緒に杏さんの誕生日をお祝いしましょう。」


    食事会はそのままお開きとして4人揃って媛のマンションへと場所を移した。

    他愛もない時間を過ごしソロソロ深夜となろうとした頃、杏が言った。


    「そろそろ終わりにしましょう。もう遅いし・・・みんな週末の予定もあるでしょうから。」


    「そうですね。最後にもう一度、杏さん、お誕生日おめでとうございます。」


    他の2人も口々に杏にお祝いの言葉をかけた。

    それを合図としてそれぞれ腰を上げて帰り支度を始めた。

    杏はちょっと化粧室貸してと媛に声を掛けてその場を外した。

    杏の戻りを待つ間に媛は1枚のメモを書いた。

    杏が戻って史と玄関を出ようとした時そのメモ書きを史の手のひらに握らせた。

    勿論、杏に見えるように。

    杏はそれを見て媛の悪意に震撼した。

    あんなに杏に懐いていたあの媛はそこにはもういなかった。

    驚きに目を見開いた杏の顔を見て媛は自分の勝ちを確信した。

    1年前の恨みを晴らせた思いがした。


    「じゃあ杏さん、藤原先生、おやすみなさい。」


    にこやかに2人を見送る媛の姿はやはり美しかった。






    帰り道、史は杏に向かって・・・


    「急用を思い出したので今日はこのまま帰る」


    と言い出した。


    史を助けたい、その気持が残っていた杏は・・・


    「今日は誕生日なの・・・一緒に居て欲しいの。」


    それは懇願に近い言葉だった。


    「悪いけど・・・ホントに急用なんだ。埋め合わせは明日にでもするから。」


    「そう・・・じゃあ、明日ね・・・・。連絡待ってる。」


    「ああ・・電話するよ。じゃあ・・・あ、杏誕生日おめでとう。」


    「うん・・・。」


    史との最後のキス・・・・杏の瞳から涙が溢れた。

    それを史は見ること無く背を向けて走り去って行く。




    その10数分前


    杏は化粧室を貸してと皆の側を離れた後、化粧室の正面にある浴室のドアをそっと開け、持ってきた”濔 教授の細菌”入りの密閉容器を開け浴室の壁にぶちまけた。

    すぐさまトイレに入りトイレにその容器を流した。

    その後丹念に手を洗いうがいをして戻った。



    杏と史を見送った媛は残っていた美於士へ冷たく言い放った。


    「あんたも帰って。」


    「・・・えと・・・今日、一緒にいない?・・・媛ちゃんと一緒にいたいんだ。」


    「ダメ・・・帰って。もう疲れたの。」


    けんもほろろな口調で取り付く暇もなかった。


    「解ったよ・・・帰るよ。じゃあ・・・明日の日曜、どこか出掛けない?」


    「・・・考えとく。・・・連絡するから。じゃあ、おやすみなさい。」


    言うなりドアが閉められた。

    美於士は媛から永遠に捨てられた事にまだ気付いていなかった。



    20数分後


    媛の部屋のチャイムが鳴った。


    「おかえりなさい。」


    史は「戻って来て。待ってる。」のメモ書きを握りしめて息を切らしながら媛の部屋へと戻って来た。


    史を部屋へと通してすぐ媛はシャワーを勧めた。

    史に杏の匂いを感じたのだ。

    嫉妬だった。

    そう、あれだけ忌み嫌っていた史を媛はいつしか愛し始めていたのだ。


    「じゃあ・・・媛、一緒に浴びよう・・・・。」


    「えっ?・・・やだ・・・恥ずかしい・・・。」


    そう言いながらも媛は史とバスルームへ向かった。





    閑話休題
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