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    終末の予定 17

     02, 2016 07:00





    始めから定まりし終わりの理 Termination (2)






    しばらくして杏が気が付いた時には現場検証は終わり、2人の遺体は検死に回されていた。

    捜査員達の好奇の目に晒されながら杏と美於士はその場で簡単な事情聴取を受けた。


    「・・・ふむ、それでは男性があなたの恋人で、女性がそこの彼の恋人である、と云う事ですね。」


    「・・・はい・・・・。」


    「と、云う事は・・・・死亡していた2人は共に、今こちらにいらっしゃるお二人を裏切っていた、ということになりますが・・・・。」


    「・・・はい・・・・。」


    「・・・・それには全くお気づきでは無かったと?」


    「・・・・はい・・・・。」


    「う~ん・・・・そんな事ありえますかね~。」


    それ迄黙っていた美於士が血相を変えて捜査員に噛み付いた。


    「いい加減してくれ!!!こんな事気付いていたら黙っているわけがないじゃないか!」


    その剣幕に押されたのか捜査員が無礼を詫びる言葉を2人に掛けた。

    遺体の状況から他殺や自殺の可能性は少なく病死であろうと見立てているようだ。

    捜査員達や美於士が訝しんでいるのは、何故、2人同時にかということだけだ。

    杏は全く事情も解らず混乱している史の恋人を演じ続け、かつ、演じきった。

    そして二人は捜査員達の同情を受けつつ開放された。


    帰り道、美於士の泣き言を沈痛な面持ちで聞き流しながら、2人の最後の姿を思い起こし改めて媛に対する憎しみを募らせた。

    しかしそれは自らがしでかした行為の結果であると云う事に杏は目を向けない。




    杏のやった完全犯罪にはもう一つの穴があった。

    浴室の壁に細菌をぶち撒けた後、その容器を殺菌する事無くそのままトイレに流してしまった事だ。

    杏は媛に死んで欲しかっただけ、いや、殺したかっただけで、人類を滅ぼす気など全く無かった。

    然しながら、杏が取った行為はその危機を産んでしまった。

    トイレに流された容器には微量の細菌が残っていた。

    それが下水へと流れ着き、下水の環境での増殖を招いた。

    ・・・細菌が増殖するに必要十分条件・・・・温度、栄養素、水、全てを整えた細菌培養器とも言える環境だった。

    都市に張り巡らされた下水道で細菌は増殖し、ネズミの体毛やゴキブリの羽根に付着した細菌はその繁殖範囲を少しづつ、そして確実に広げていった。

    6月~9月は細菌の死滅温度30度を地上の気温は超えていたので細菌が地上へと拡散することはなかった。

    また、10月以降は地上の気温が下降したが、逆にその為にネズミなどが地上に出る事等を減少させたので、その時期もまた地上への拡散は避けられた格好になった。

    しかし、その時期、地下世界・・・下水道網で細菌は猛威を奮っていた。

    ほとんどの生物が下水道から姿を消した。

    地下世界では細菌を培養し続けていた泥流や苔類だけが蔓延っていた。





    2016年 1月



    ついに人類は終末の予定の足音を聴き始める。



    発端は埼玉県の田舎町の山中の集落だった。

    年明け早々、ある集落の下水道が大量のネズミの死骸によって堰き止められ溢れ出すと云う出来事が起きた。

    すぐさま行政は業者へと依頼しその件を処理したかに見えたが、いつまで経っても業者からの報告が上がって来なかった。

    痺れを切らした行政は自らその地区へ連絡を取ろうと試みたが、(既に時遅く)集落とは一切連絡が付かない事態になっていた。

    またその時期が正月休みと重なっていたことも事態の収拾に災いした。

    それが原因で、事態が近隣へと拡散している事に気がつくのがかなり遅れてしまった。

    緊急の事態を県が把握したのは丸1日経過してからで、政府に報告が上がったのは2日経過してからであった。

    その時には既に死者の数が(たった2日で)300名を超えていた。

    政府はマスコミに国民のパニックを避けると云う名目で報道規制をかけた。

    その上で被害の原発地区の近隣を隔離処置して、被害の拡大を防ごうと全力を尽くした。

    しかし・・・・・政府も又、杏と同じく地上の事しか視野に入っていなかった。



    近隣の隔離から7日ほどでその事態は終息したかに見えた。

    政府は原因の究明に、国の全ての機関を駆り出して躍起になったが、結局主たる原因と呼べるものは発見出来ずに終わった。

    死者の死因が心不全、呼吸不全、突然の脳死、内臓の溶解、劇症的な白血病、等多岐に渡って原因の特定が出来なかったのだ。

    同時に一見事態が終息したように見えた為、マスコミは報道規制の撤廃を求め、それに抗する事が出来ずに政府は報道規制を解除した。



    報道の解禁で社会は大騒ぎになった。

    しかも原因が解明されていない為、あらゆる流言飛語が飛び交う事となった。

    その中で、安倍御主人(あべの みうし)の予言の文(ふみ)が明らかになった。




    騒然とする社会の中、この地上でその原因を知っている者が唯一人いた。

    杏である。

    報道が始まって、すぐに杏はその原因に思い当たった。

    半年ほど前に自分が行った完全犯罪・・・の余波が人類を破滅の危機に導いている。

    しかし・・・・・それを知らせる事も出来ず・・・そのまま終息してくれる事を神に祈るしか無かった。




    ひと月ほどのち杏は、自身の神への祈りが届かなかった事を知る。





    閑話休題

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