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    終末の予定 18

     03, 2016 07:00




    始めから定まりし終わりの理 Termination (3)



    媛と史の死因が共に性行為中の腹上死(媛は呼吸器不全、史が心不全)との検死結果が何処からともなく医局へ伝わり、杏と美於士は医局で好奇の目に晒される事となった。

    塞ぎがちだった美於士はそれに耐え切れず長期の休暇を申請し許可された。




    「杏姉さん・・・ちょっと旅に出てくるよ。」


    力無く笑う美於士へ杏は封筒を渡した。

    中身は金・・・300万円ほど入っている。

    中身を確認して美於士はちょっと驚いた様だ。


    「・・・何驚いてんの?・・・・それくらいの金で。」


    「・・・いや・・・その・・・杏姉さんが・・・・。」


    「・・・ふん、私の様な守銭奴がなんで?って。ふふふ・・・。」


    「あ、いや、そんな意味じゃなくて・・・・。」


    「ふん、無理しなくていいわよ。アンタの顔見れば言いたいことぐらい解るわよ。何年一緒にいるのよ。」


    「あ・・・・それは・・・。」


    「気にしなくていいわよ。・・・・まあ、今回の事の原因は・・・勿論アンタのせいよ。・・・でも、まあ、私にも1%くらいは責任があるかもってね・・・。だから、それで気晴らしでもして来なさい。」


    「・・・1%・・・しかないの?・・・ハハハ・・・杏姉さんらしいや。」


    「ふん、まあ、ちょっとは軽口が叩ける様になったのね。まあ、早く帰って来るのよ。・・・(もう、私の側にはあんたしか居ないんだから)」


    最後の言葉は飲み込んだが、気持ちは十分に伝わった様だった。


    「・・・うん・・・有り難く借りとくよ。ちょっと遠出でもしてみようかな。」


    「そうしなさい。」


    美於士の頭をポンポンと叩き杏はその場を後にした。

    それきり美於士の消息は途絶えた。



    それから半年後、杏が銃爪(ひきがね)を引いた滅亡へのカウントダウンは終焉の時を迎えようとしていた。

    一旦、事態が終息したかに思えた為、政府は被害地区近隣の封鎖を解いた。

    それにより細菌の拡散は地下世界のみならず、地上でもその速度を増す結果となった。

    細菌は地下世界での拡散の時期にその性質を変貌させ2週間の潜伏期間と云う自己保全の手段を取得していたのである。

    この2週間で細菌の拡散は静かにそして広範囲へ及んだ。

    そもそもこの細菌は「濔 教授」が創りだした物ではなく、元々地上に古くから生息していた通常は全く無害な細菌であった。

    しかし、その分裂期に、ある一定の割合で突然変異を起こす。

    濔 教授はその突然変異体を人工的に作り出しただけであった。


    その突然変異体が今回の悲劇を齎している細菌であった。

    ある一定の割合とは、実は天文学的数字に1回しか起こらない為、有史以来、人類や他生物に対し壊滅的打撃を与える事は殆ど無かった・・・今までは。

    今までも実は世界中でそれは起きてはいた。

    数百年に一度、世界の何処かで起きていた集落の全滅事件、船舶の消失事件、等である。

    然しながら今までは文明の未発達さ故、そういう事件が起こると原因不明の疫病として被害集落に火をかける等、人類はそうとは知らずもきちんと隔離や殺菌作業を行っていたのだ。

    それが現代のグローバル社会では機能しなくなった。

    人々の移動速度は隔離を不可能にし、人権問題で集落の焼き打ち等考慮さえされなかった。

    そうした中、埼玉の1集落から拡散を始めた細菌は交通網の発展により潜伏期間の2週間で車、鉄道、航空機、あらゆる手段で世界中へ運ばれて行った。



    2016年 1月中旬


    関東地区全域は終末の様相を呈した。

    路上には遺体が散乱し、建物の炎上は地上を焼き尽くした。

    それを報じるマスコミも数日で使命を終えた。

    それから数週間後には日本全土から生きとし生ける者全て姿を消した。

    ほぼ時を同じくして地球上で同じ現象が起こった。

    ただ・・・10億分の1の確率でこの細菌に耐性を持つ者がいた。

    生き残った最後の人類はそれぞれ呼びかけ合いその存在を確かめ合っていた。

    北米に1人、南米に1人、中国に1人、英国に1人、南アフリカに1人・・・

    しかし、もはや集結する手段も失っていた。

    そのうち、1人、また1人と連絡が途絶え始めた。

    生命が失われたのか・・・単に電力が失われて連絡の手段を失ったのかさえ確認の仕様が無い。

    人類はその終焉を迎えた。



    終末期、杏はバタバタと倒れていく同僚、患者を為す統べなく見送り続けた。

    まさか人類滅亡の張本人の自分が細菌耐性をもつほんの一握りの体質だとは思いもせず、自分に訪れる順番を黙って待っていた。

    しかし、周りに誰もいなくなり、日本中から人が消え去っても杏は生きていた。



    日本中から生き物が絶滅した後も、朝起きると顔を洗って朝食を摂り出勤する。

    病院へ着いたら白衣に着替えて医局で医学書を読んだ。

    患者を診察していた時間が無くなった以外はそれまでと全く同じ生活を送った。

    インターネット上で世界に生存者が数人いることは知っていたが、連絡をとりあう気は全く無かった。

    意味が無い・・・・・それだけの理由だ。

    食事や飲水は杏一人の分くらいはスーパーやコンビニの冷凍食品で十分事足りた・・・・今はまだ。そのうち電気が止まればそれも失われるが。

    その時は死ねばいいだけだ。



    2016年 6月 6日


    誕生日の朝を迎えた。


    「・・・誕生日か・・・お祝いしなきゃ・・・・」


    独り言ちていつもの様に病院へ向かう。

    そのまま1日が終えようとした時、机の上に置きっ放しにしていた携帯が突然鳴った。


    「きゃっ!・・・・」


    驚いて携帯を取り上げ着信を見る。

    名前をみて杏は目を見開き、慌てて通話ボタンを押す。


    「はい・・・もしもし、美於士?美於士なの?」


    「・・・もしも~し・・・杏姉さん・・・・杏姉さん・・・・」


    「・・・美於士・・・生きていたの・・・・・」


    「・・・・ああ・・・姉さんも・・・・」


    「今、何処にいるの!何処?」


    「あ、うん・・・やっと東京に着いたんだ・・・・」


    「・・・何処にいたのよ~!!!連絡もしないで・・・・」


    「ああ・・・ごめん。チベットに居たんだ・・・帰る手段が無くて。取り敢えず韓国まで乗り捨ててあった車を乗り継ぎながら来て、そっから船で九州に・・・でも途中で沈みそうになって死にかけたりして、ハハハ・・・でやっとね。」


    「・・・・もう・・・早くこっち来て顔を見せて。」


    「あ、うん・・・で、杏姉さんは今何処にいるの?」


    「あ、病院にいるわ。」


    「病院?・・・何してんの病院で。」


    「別に何も・・・・そんな事はどうでもいいから、早く帰ってらっしゃい!」


    「あ、うん・・・解った。近くの車探してすぐ行くよ。」


    「うん・・・待ってるわよ。」


    「あ、そうだ。言い忘れてたよ。杏姉さん、誕生日おめでとう。」






    閑話休題

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