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    三茶狼の穏やかな1日

     01, 2016 16:00



    私はみんなから、三茶狼と呼ばれ恐れ…忌み嫌われている。

    こら!

    三茶楼ではない!

    中華屋じゃない!

    狼だ!「お お か み」 と書くのだ!


    この道では、知る人ぞ知る偉大な…伝説的人物なのだ。



    しかし、そんな私も毎年誕生日が近くなると気が滅入る。

    どんなに人に恐れられ…私が歩くと川が割れたように人並みが一本の通り道を作る。

    私が睨むだけで、人々は縮み上がり、私が怒鳴ると人々は地べたにひれ伏してしまう。

    そんな私でも…

    いや、そんな私だからこそ、毎年の誕生日を傍で祝ってくれる人が誰ひとりいない。

    これは、結構キツいもんだ。

    ・・・・等と毎年誕生日に愚痴を言っていたら、ちょっとした商売仇を消した次の年からそいつの女から毎年ナイフでブスりと血染めのお祝いを貰うはめになってしまった。

    最初の年はまあ、俺も後ろめたい気持ちもあって警察沙汰にはせずそのまま放っておいたがさすがに2回目は(ちょっと重症で意識を失った事もあり)店の主人が警察に通報して、その女はお縄になってしまった。

    もっとも俺としては警察なんぞに関わる気は無かったのだが、行き掛かり上止むを得ずといった感じで事情聴取に応じたのだ。

    しかし、これがまずかった。

    叩けば埃が出る身の上としてはやはり警察沙汰は避けるべきだったのだ。

    事情聴取の途中から雲行きが怪しくなり、最終的にはこっちもお縄を頂戴するハメに陥ってしまった。

    警察署の廊下ですれ違った奥菜の女が俺を見て甲高い笑い声を上げるのを俺は苦々しく睨みつけるしか無かった。

    俺を刺した奥菜の女も、刺された俺も仲良くブタ箱で3年を過ごす羽目になった。

    しかも出所した日はクリスマス。

    最悪だった。

    その上、その日もあの忌々しい奥菜の女から3度(みたび)のブスリ!・・・・

    またもや入院生活を送る羽目となったのだ。

    勿論今回は警察沙汰にはしなかった。

    ブタ箱生活はもう御免だ。

    そして今日、晴れての退院だ。



    懐かしい我が町三茶をのんびり散策して春うららを堪能した。

    夕陽を眺めながらの帰り道、いつもの店へ顔を出す。


    「いらっしゃい♪・・・あ、ダンナ~、お勤めご苦労様です!!」


    「(・д・)チッ!人聞きの悪い事言うな!」


    「あ、ハハハ・・・すんません。元気になられたようでなによりです。」


    「ああ・・まあ、やっとな。」


    「この街もダンナが居ないと困りますから、良かったですよ~。」


    「ふん・・・相変わらずオベンチャラだけは1級品だな。」


    「そんな~、ホントの事ですよ~。」


    「ふん、まあ良い。・・・・いつものバーボンくれ。」


    「はい、お待ちを。」


    その時、背後に人の気配を感じた。


    「・・・お、お前・・・・。」


    咄嗟に身構える。

    あの奥菜の女だ。


    「フジタ~!久し振り~。」


    「な、なんだ!またやろうって言うのか!いい加減にしないか!」


    「・・・もうやらないよ~。いい加減、気が済んだから・・・・。あの人が死んでもう・・・・。」


    「・・・・ああ・・・悪かったよ。仕方なかったんだ。もう許してくれ。」


    「・・・ああ・・・許してやるよ。・・・・その代わり、1杯奢って・・・・。」


    「ああ・・・勿論だ。好きなものを呑め。」


    「マスター・・・私もフジタと同じもん。」


    「は、はい。お待ちを。」


    私は数年来、刺されつ刺されつ(やられっぱなしだったので)の関係だった奥菜の女(ああ・・もうこの呼び名も終わるという事だな)と酒を酌み交わした。

    久々にご機嫌な夜を過ごしていた。

    店の壁にぶら下がっている年代物の柱時計が12時を知らせた。

    おやおや・・・午前様になってしまった様だ。

    まあ、良い。

    帰ったところで最近は待っている女もいない。

    その時・・・・


    ブスッ!!!!!!!


    「うっ!!!・・・・な、なんだ!何をする・・・・・」


    奥菜の女の手にはいつもの包丁が握られていた。


    「何故だ?・・・・許すと言ったではないか・・・・」


    「ふん!!!バカか?私がお前を許すはずがないじゃない。」


    奥菜の女はせせら笑って私を見下ろしていた。

    私は4度(よたび)店の床に横たわり、辺りは私の血で染まった。


    「・・・何故だ・・・じゃあ、何故今日・・・・。」


    薄れゆく意識の中で奥菜の女に問いかける。


    「だって・・・もう今日じゃないよ、昨日は4月1日・・・エイプリルフールじゃない。誰も相手にしてくれない可哀相なあんたと遊んでやったのよ。有り難く思いなさいよ。」

    キャハハ・・・・と大声で笑いながら奥菜の女は店から消えた。

    そうだな・・・・確かに誰も相手にしてはくれなかったな。


    「ありがとよ・・・・・。」


    そうつぶやいて私は目を閉じた。




    閑話休題
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