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    時の片~かけら  11

     30, 2012 07:00
    「早苗お姉さん!・・・・ご飯食べよぉ!」


    幸治君の元気な声が響いた。


    「そうね・・・食べよう、食べよう・・・」


    潤子さんの明るい声が応える。


    「はい・・いただきます・・・」


    私も昨日よりは元気が出てきた。

    何も解らず過ごした2日よりは、自分の名前だけでも思い出した今日の方が希望を感じたのだ。

    楽しく談笑しながら食事を済ませ、ちょっと一服と云う感じになった時潤子さんが意外な話を始めた。


    「今日はちょっと幸治と大学病院に行く日なの・・・」


    「えっ?幸治君どこか具合が悪いんですか?」


    「ええ・・・今年、父親が事故で亡くなって・・・ちょっと、記憶障害になっているらしいの・・・」


    「えっ?・・・・そうなんですか?・・・・ごめんなさい・・・自分の事ばかりで・・・気が付かなくって・・・」


    いつも明るい幸治くんが父親を亡くしたばかりで、その上記憶障害にまでとは・・・思いもしなかった。


    「ううん・・・そんな大したことじゃないのよ・・チョットだけ記憶がぼんやりしているだけだから・・・」


    「はあ・・・そうなんですか・・・」


    記憶がない私を全く迷惑がらずにこんなにも親切にしてくれる訳がわかった気がした。

    きっと、文字通り他人事ではなかったのだ。


    「それで、担当の先生に昨日連絡してみたら・・早苗さんも一緒に検査しましょうって話になったのよ。・・・検査してみる?昨日の病院よりも設備が整っているから何かわかるかもしれなし・・・どうかな?」


    「あ、はい・・・いいんですか?・・・スイマセン・・ご迷惑ばかり・・」


    「あら?そういう意味じゃないわよ。気にしないの!困った時はお互い様よ・・ね!」


    「あ、はい・・・ありがとうございます。」


    「じゃあ、今日は幸治と一緒に検査だ・・幸治!良かったね、寂しくないでしょ。」


    「うん!・・ヤッター!」


    「あらま!・・・フフフ・・・」


    そういう流れで精密検査を受けることになったのだが、昨日とちょっと違い病院に着いた途端、私は違和感を覚えた。いや、違和感ではなく既視感だった。

    見るもの全てに見覚えがある。

    ナースステ-ション、白衣、機器・・・・それぞれの名前さえわかった。

    全ての検査を終えて診察を受ける時そのことを話した。


    「早苗さん、きっと病院に勤めていたのよ!」


    潤子さんが歓声に近い声を上げた。


    「あ、はい・・私もそう思います・・・いえ、そうです。」


    私の中に確信が芽生えていた。毎日扱っていたものばかりだ。

    詳しい検査結果は後日と云うことで、その日は幸治君の検査が終わるのを待って引き上げた。

    何となく帰り道の足取りが軽くなった。

    私の年格好から云うと医者ではなく、きっと看護婦(現在は看護師)だ。

    少しずつではあるが自分の事が思い出せていることに安堵し、帰り道では少しはしゃいだ感じさえ与えたと思う。



    しかし、なにかを思い出せたのはそこまでだった・・・・

    4日目以降私は何も思い出せなかった・・・・



    続く



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    こちらより




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