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    誰かがそばにいる  9

     19, 2012 00:00
    香澄は震える手で香織を抱き上げ居間へ入る。

    その瞬間香澄の体を戦慄が走った。

    最早結界の恩恵には預かれない事を悟った。

    そこら中にアイツたちがいる。


    (こんな所には、一刻たりともいられない!)


    そう思った香澄に更なる恐怖が襲った。



    【逃げたら~その子はもらう~】



    壁に一瞬だけ文字が浮かんだ。

    香澄は立ちすくみ茫然と壁を見つめ続けながら、どう対処すればいいのか考えていた。

    香織に幼稚園へ行く準備をさせて、ダンボールにもう一度刃物を詰めテープで固定し取っ手をつけた。

    その上で急ぎコンビニへ向かい勤務先の自分宛へ送った。

    マンションには捨てられない…勤務先のゴミ捨て場に捨てるしかない。


    「ママ、お腹すいたよ~。」


    香織の言葉で我にかえり、心の動揺を押し殺し優しく穏やかに答えた。


    「そうね~。ママ、今日あわてんぼさんだったね。ご飯忘れちゃったね。ハンバーガーでも食べよっか?」


    「うん!香織ハンバーガー好き!」


    「そうよね~。香織はハンバーガー大好きだもんね~!」


    笑顔の娘と2人でハンバーガーを頬張りながら、香澄はこれからどうすればいいのか考え続けた。

    香織を幼稚園へ送り仕事場へ向かったが、その日は仕事に全く身が入らず上司から何度も注意を受ける羽目になった。

    夕方香織を迎えに行きながら、このままどこかへ行ってしまおうとも考えたが、あの壁の文字が香澄にそれを躊躇させた。


    「ママ~!!」


    勢い良く抱きついて来た香織を抱き上げながら、香澄は途方に暮れていた。


    (私はどうすればいいの…)


    マンションの前まで帰り着くとそこは人だかりになっていた。

    パトカーや救急車が何台も止まっていてかなりの騒ぎになっている。


    「一体何があったんですか?」


    野次馬の1人に声をかけてみた。


    「なんか、2階の住人が自殺してたらしいよ。自分で自分をめった刺しして死んでたってさ~!こわ~!!」


    香澄はお礼を言う事も忘れ香織の手を引き自宅へ急いだ。

    陽が暮れようとしていたのだ。

    エレベーターを降りると、通路にアイツたちが待っていた。

    香澄たちの周りをぐるりと取り囲み蠢いている。

    香澄は香織を抱きかかえてドアの前まで進みドアを開けると同時に気を発し玄関に結界を張った。


    【ドン】


    暫くだけの気休めだと理解していたがそうせざるを得なかった。

    ホッと一息ついた時香織が言った。


    「ママ、今日はお客さん一杯いたね~!」




    つづく



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    こちらより




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