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    時の片~かけら  5

     17, 2012 19:00

    5月26日


    その日。

    午前。


    大きな火砕流が、連続して発生した。

    作業員ニ名がこれに巻き込まれ、腕に火傷を負った。

    この事の認識に学者たちと一般の人々では、格段の差があった。

    学者たちは火傷を負ったのは、死の一歩手前であると考えた。


    死んだも同然。


    住民、マスコミ、他関係者への警鐘になるであろう。


    だが、人々の認識は全く逆だった。



    火傷程度で済むのなら、火砕流とは大した事はない…と。

    この認識のズレが、重大な、そして悲惨な結果を招いた。


    29日にも、大きな火砕流が発生したが、被害者は出なかった。

    この事が、マスコミの無謀な報道合戦に拍車を掛けた。

    日本中のマスコミが雲仙岳へ押し寄せ、中腹の定点に危険を省みず殺到した。

    学者たちは自殺行為だと指摘したが、最早聞く耳を持つ者は居なかった。



    熔岩ドームの成長は速度を増し、それに伴い火砕流の高温化は確実に進んでいた。

    しかしその日以降、梅雨のはしりの時期に入った為、雨が続き雲仙岳の山頂はその姿を厚い雲に隠した。

    そしてそのまま何事もなく日々は過ぎていった。

    運命の6月3日まで。




    火砕流が発生した前前日の5月24日。


    午後になって新司は専務に呼ばれた。


    「榊さん。悪いが、ちょっと頼まれてくれないか?」


    「はあ…?どういう事です?」


    「ああ、毎日新聞の記者さんが、運転だけじゃなく雲仙自体に詳しい人を頼むって言うんだ!」


    専務は、申し訳なさそうに続けた。


    「で、何だが…。運転手でない榊さんには、申し訳ないんだけど・・・雲仙の事にかけてうちで一番の人って云うと榊さんしかいないんで…、一つ頼まれてくれないか?」


    「はあ…、まあ、構いませんが、私は何をすればいいんですか?」


    「あ、いや、特別な事は、何もする必要はないんだ。ただ、記者さんの案内と、雲仙について少しレクチャーしてくれればそれでいいんだ。」


    「はあ…、まあ、大した事は出来ませんが、私で出来る事なら…。」


    「そうか、頼めるかい?!それは、助かるよ。ちょっと、銀行さんの口利きなもんで断れなくて困ってたんだ。いや、本当に有り難い!」


    この、一見大した事のない頼まれ事が、新司の運命を決めた。


    「専務、それで何時から乗務に附けばいいんですか?」


    「ああ、今日はもういいそうだ。明日の朝一で頼むという事だった。宜しく頼むよ。」


    「分かりました。じゃ、明日朝一番と云う事で…。それじゃ、失礼します。」


    「ああ、ご苦労様。」


    新司は重役室を後にして、その足で配車センターの車庫へと向かった。



    続く




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    こちらより




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